20世紀初頭の時点で、パプアニューギニアの少数民族フォレ族には、死んだ仲間や家族の死体を食べる弔いの習慣があった。身体だけではなく、脳も食べた。フォレ族はそのお陰で、彼ら特有の「クールー病」に対する抵抗力を身につけていたことがわかった。 「クールー病」は、人間の牛海綿状脳症(BSE)にあたるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と同じく、悪性のタンパク質プリオンによって引き起こされる。脳内にプリオンが蓄積されると筋肉の動きに異常が起こり、認知症を発症して最終的には死に至る。 患者の神経組織を食べなければ、この病気に感染することはない。だがフォレ族は、仲間の死体の脳を食べることで知らぬ間に病気に感染していた。 しかし人肉食の習慣は、1つ良い効果をもたらしていた。フォレ族の多くが、クールー病やCJDに抵抗力を持つとみられる遺伝子変異をもっていたのだ。科学雑誌「ネイチャー」に今月発表された研究で、