「伝統を守る」ということ 能は650年という長い歴史を持つ伝統芸能だが、その後江戸時代に登場した歌舞伎などに比べると、認知度は低い。高林氏は「今回の受賞が、より多くの人に謡を聴いていただくきっかけになれば」と能の未来に期待を寄せるものの、危機感も抱いている。 「伝統芸能にとって最も大切なことは、『伝統を守ること』です。つまり『同じことがずっと続いていること』が大事なのです。しかし、国や関係省庁からは『現代に合わせるためにどういう試みをしていますか?』と聞かれるばかりです。本当に必要なのは、能を現代に合わせる活動を支援することではなく、能を前時代から引き継いだ通りに次の世代に引き継ぐための活動を支援することです」(高林氏) 能とは、催花賞とは 奈良時代に中国から渡来した散楽が猿楽に進化し、田楽という芸能の影響を受け、室町時代に観阿弥によって「能」として基礎が形成された。その後、観阿弥の息子で