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ブックマーク / traindusoir.hatenablog.jp (75)

  • 戦争よりもバブル──フリーターの数を減少させるもうひとつの方法 - 備忘録

    最近読み応えのあるエントリーが増えているこちらのブログから。 正規へ(再・2008・10・30)(ゲンダラヂオ) 稿の最も重要な発見として、非正規雇用としての離職前2年から5年程度の同一企業における継続就業経験は、正社員への移行を有利にすることが明らかとなった。その事実は、非正規から正規への移行には、労働需給要因に加え、一定期間の継続就業の経歴が、潜在能力や定着性向に関する指標となっているというシグナリング仮説と整合的である。 フリーターは、景気が回復し新規学卒市場が売り手市場化したことによって、若い層を中心に減少しているといわれます。その一方、上記のエントリーにもあるように、フリーターの滞留という問題(いいかえれば、ロス・ジェネ問題)があることも知られています。 この問題に関連して、近年よく聞かれる「破壊的」あるいは「反社会的」言動(そして、そういうものが「売れる」文章であるのも事実)

    戦争よりもバブル──フリーターの数を減少させるもうひとつの方法 - 備忘録
    smicho
    smicho 2009/02/19
  • ダロン・アセモグル「技術と不平等」──解題のようなもの - 備忘録

    ※「◆」以降を追記しました(12/25/08)。グラフを差し替えました(12/27/08) http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20081216/1229440307 これは、全米経済研究所(NBER;National Bureau of Economic Research)のホームページに掲載されているDaron Acemoglu“Technology and Inequality”(NBER Research Summary)の全文を訳したものである。オリジナルの論文には、このほかに脚注として、参照された論文が明記されている。 ここでは、この論文の内容を簡単に振り返るとともに、あわせて、我が国経済と不平等の現状と将来を考える上で焦点をあてるべきことは何かについて整理することにしたい。 技術革新と不平等の拡大 近年、多くの先進諸国で不平等(格差)の拡大がみら

    ダロン・アセモグル「技術と不平等」──解題のようなもの - 備忘録
    smicho
    smicho 2008/12/25
  • 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2) - 備忘録

    (過去のエントリー) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) 承前。 前回は、実質賃金(貨幣の購買力を加味した実質的な賃金水準)の増減率について1970年代から現在までの推移を概観し、実質賃金増減率は1970年代と比較して現代では明らかに低くなっていることを確認した。2002年以降の景気回復期においては、労働分配率の低下が実質賃金増減率低下の主要な役割を占めている。しかしながら、賃金は生産活動によって生み出される付加価値からの配分であることを考えれば、実質賃金を増加させ生活水準の向上を果たすためには、労働生産性(就業者1人当たりの付加価値額)を高めることが必須といえる。 1970年代以降の労働生産性(前年比)の推移をみると、1990年を境に、その幅が一段低い水準に止まるようになったことがわかる。 ここでは、まず生産関数アプローチによって、労働生産性の低下を供給側の要因から探る。

    労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2) - 備忘録
  • 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) - 備忘録

    ちょっと前になるが、賃金上昇率と物価上昇率の関係が話題になった。日経済は、1970年代に記録的なインフレを経験したが、その当時の賃金上昇率はそれ以上に大きかった。その一方、マイナスの物価上昇率が続いた1990年代後半以降、賃金上昇率はマイナスとなっている。1970年代のインフレ期の方が、賃金上昇率−物価上昇率、つまり貨幣購買力を加味した実質的な賃金上昇率は高かったことから、この時代の方が1990年代後半以降よりも国民の幸福度は高かった可能性が高いということである。 「所得の伸びとインフレ率について*ちゃんと*調べてみたよ。」(svnseeds' ghoti!) 「所得の増加とインフレ率の関係について(その2)」(鍋象のひとりごと) 今回の分析では、実質賃金増減率は1970年代以降どのような要因で変動したのかを探る。 モデル Y:産出量、L:労働投入量(就業者数)w*(=W*/L):1人当

    労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) - 備忘録
  • 育児休業制度は、女性の結婚・出産行動に効果がないといえるのか? - 備忘録

    マクロデータによる分析 先日のワーク・ライフ・バランスに関するエントリーでは、次のように記載した。 育児休業制度を利用して就業を継続したは増加しているが、就業継続者そのものは、1980年代後半以降、大きく変化していない(ほぼ25%前後)。 これは、国立社会保障・人口問題研究所「第13回出生動向調査」の次のグラフを利用したものである。 ここから「育児休業制度を利用して就業を継続したは増加しているものの、就業継続者そのものは1980年代後半以降、25%前後で大きく変化はしていない」ことがわかる。つまり、マクロのデータをみる限り、育児休業制度を利用して就業を継続しているのは、仮に育児休業制度がなかったとしても、就業を継続する意志を持っていた者である可能性が高いのである。 こうした見方に立つと、育児休業制度は、働く女性にとってのメリットにはなっているものの、出産後も継続して就業をする者を増やす

    育児休業制度は、女性の結婚・出産行動に効果がないといえるのか? - 備忘録
  • いわゆる非正規雇用はいつから増加し、そして足許ではどうなっているのか? - 備忘録

    02/28付けエントリーにおいて、次のように記述した。 企業行動に関連して、非正社員が増加している理由を問う調査は各種あるが、そのほとんどは、近年の非正社員の増加は、(高度情報化等に伴うものとするよりも)コスト削減のためであるとする回答がほとんどを占めているように思う。つまり、非正社員の大幅な増加は、長期不況・デフレ下において雇用にかかるコストを削減せざるを得ないという企業の事情によって引き起こされたと解釈するのが妥当であろう。 実証を重視する当ブログとしては、この点を確認せずにいるのは片手落ちであろう。 「非正社員」をどのような定義でとるかは、結構難しい技術的問題である。統計的には、(1)労働時間の長短による区分、(2)雇用契約期間の定めによる区分、(3)職場での呼称、という3つの区分がある。ここでは、 (1) 雇用者に占める週労働時間が35時間以上の者の割合 (2) 雇用者に占める雇用

    いわゆる非正規雇用はいつから増加し、そして足許ではどうなっているのか? - 備忘録
  • 日本版ニュー・エコノミー論と格差問題(1) - 備忘録

    これから標記のテーマで連続的なエントリーを行いたい。これらは、これまで、ブログにおいて述べてきたものを少しまとめて整理するもので、新たな観点を追加するようなものではない。(ブログ媒体は、当は、こうした作業に向いたものではないが、他に公開できる場所があるわけでもないので。)しかし、この手の情報は、公開せず手元に置いていても、近いうちには陳腐化してしまうし、ブログ内にまばらに配置されていても、最終的には残らないように思える。(自分自身も、そのうちに忘れてしまうだろう。)少々手間ではあるが、ここでひと通り整理してみることにしたい。 ただし、一気に作業を終えるのは負担が大きいので、連載形式で書き進めることにする。第1回は、ニュー・エコノミーと格差についての理論と、その理論の根拠に対するあり得べき批判について論じる。第2回は、データ分析に基づいて、ニュー・エコノミーによって生じる格差の拡大は、必

    日本版ニュー・エコノミー論と格差問題(1) - 備忘録
  • 山田昌弘「希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」 - 備忘録

    希望格差社会―「負け組」の絶望感が日を引き裂く (ちくま文庫) 作者: 山田昌弘出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/03/01メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 89回この商品を含むブログ (82件) を見る コメント 一読して判るように、書の時代認識は、以前に当ブログでも取り上げた高原基彰「不安型ナショナリズムの時代」とほぼ一致している。というか、同書が書から強い影響を受けているということなのだろう。これらに共通する時代認識は、今でも多くの若年格差論の重要な骨格を成しており、この問題を(景気循環的な観点からではなく)歴史的な視座から捉えることの有力な根拠となっている。この様な時代認識、特に労働やグローバル化に関する見方*1についての批判は、既に行った高原への批判で概ね事足りていると思う。 著者の言う「パラサイト・シングル」は、豊かさの中に潜む貧困の可能性を指摘し

    山田昌弘「希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く」 - 備忘録
  • 賃金は何故上昇しないのか? - 備忘録

    09/23/07付け日経済新聞「エコノ探偵団」でも特集されていましたが、景気回復が進み完全失業率が大きく低下する中で賃金の上昇がみられないといことは、色々な場面で取り上げられているようです。以下の論点は、某所の偉い人への説明の際に聞かれる可能性があるので、自分が急遽まとめたもの、今現在のこの問題に対する自分自身の認識です。 1.完全失業率は低下しているものの、消費者物価上昇率の上昇が加速する状況にはない。このことは、自然失業率は現下の完全失業率の水準よりも低いことを示しており、労働市場の需給状況は必ずしも逼迫していない。。*1 2.1990年代の長期不況は非正規雇用の増加を加速したが、(1.の要因とも相俟って)それが反転する兆しは見られない。また、中小企業の付加価値生産性の上昇は相対的に低く*2、マクロ的な付加価値生産性の高まりが(労働者の構成上多くを占める)中小企業従業員の賃金上昇に繋

    賃金は何故上昇しないのか? - 備忘録
  • 小野善康「不況のメカニズム ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ」 - 備忘録

    不況のメカニズム―ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ (中公新書) 作者: 小野善康出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/04メディア: 新書購入: 10人 クリック: 121回この商品を含むブログ (57件) を見る 08/21/07付けエントリーは書について書いたものではないが、一部の論点は書に対しても当てはまるように思う。書に関して気になっている論点は以下の通り。 不況が「特殊な状況」であるとの見方をせず、不況均衡のような状況も生じ得るとする点。また、この点は、ニュー・ケインジアンとは明確に異なるとしている。その背景には、「有効需要の原理」によって、逆向きの因果関係で物価や賃金が決定されるとの見方がある。 中央銀行が量的緩和や低金利政策へのコミットメントを行っても、(流動性プレミアムは低下せず、)民間投資は拡大しないとする点。その背景には、流動性はいくら

    小野善康「不況のメカニズム ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ」 - 備忘録
  • ロバート・フランク“Falling Behind”(その1) - 備忘録

    Falling Behind: How Rising Inequality Harms the Middle Class (The Aaron Wildavsky Forum for Public Policy) 作者: Robert H. Frank出版社/メーカー: University of California Press発売日: 2007/07/02メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見る コメント (第8章まで読了)同書では、「地位財」と区分されるある種の財が人々に顕示的な消費を志向させることから、格差の広がりがミドル・クラスの社会厚生を低下させる可能性が論じられる。米国では、1980年代以降、高所得者の所得がより高くなる傾向が顕著であり、しかも所得再分配の機能が低下していることから、その傾向は税引き後ではより大きなものとな

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  • 内田樹「格差社会って何だろう」 - 備忘録

    「格差社会」というのは、格差が拡大し、固定化した社会というよりはむしろ「金の全能性」が過大評価され、その結果「人間を序列化する基準として金以外のものさしがなくなった社会」のことではないのか。 経済的格差、或いは「下流」であることの意識が、人間の不幸と密接な関係を持つようになったというのが、現代の格差問題の質にあり、それが長期不況・デフレ経済以降顕著になった、ということではないか。そして、重要なのは(絶対的基準でみた場合の)「貧困」の問題以上に、他人との相対的な比較を通じた不幸にあると思われます。 だから、社会等への貢献という意味での(つまり、他人との相対的な比較とは異なる意味での)人との繋がりを持つ人間は、不幸からの離脱が可能になるのかも知れない。結婚が幸福を促進するという幸福研究の含意も、ここから理解可能になる。

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  • 袖川芳之・田邊健「幸福度に関する研究〜経済的ゆたかさは幸福と関係があるのか〜」 - 備忘録

    主観的幸福度(=「国民生活に関する世論調査」における「生活満足度」)は、周囲との相対的比較で判断されている可能性が高く、現在の主観的幸福度と比較して論じることには無理がある。景気変動との関係では、規則的な連動はみられないものの、急激な経済状況の変化や長期的なマイナス・トレンドなどの刺激に対してはネガティブに連動。「団塊の世代」は、年齢別にみて主観的幸福度が低下する「弛み」を形成しており、当該層の年齢が高くなるために昭和40年代初頭と現在では構成するサンプルの分布が異なる。主観的幸福度は、経済的豊かさと全く関係がないわけではなく、言わば上方硬直性のある指標のようにもみえる。 リチャード・レイヤードに因れば、幸福に影響を与える7大要素は、[1]家族関係、[2]家計の状況、[3]雇用状況、[4]コミュニティと友人、[5]健康、[6]個人の自由、[7]個人の価値観。飽戸弘助の研究では、27の領域別

    袖川芳之・田邊健「幸福度に関する研究〜経済的ゆたかさは幸福と関係があるのか〜」 - 備忘録
  • 内田樹「下流志向 学ばない子供たち 働かない若者たち」 - 備忘録

    下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち 作者: 内田樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/01/31メディア: 単行購入: 6人 クリック: 96回この商品を含むブログ (672件) を見る 下記のコメントについては、十分に議論が整理されていないにも拘わらず、比較的アクセス数が多く、かつ内田氏批判の文脈で使用されるケースが見受けられるので、修正します。自分としては、書を社会科学の文献として活用することは誤りであり、哲学者の語る表層的評論とする必要があるように思います。その様な活用に限定する限り、書は、評価すべき概念規定や思考の枠組みを含むものであるとも言えるでしょう。 コメント 現在読んでるところ。このに対する纏まった論評は後日。以前取り上げたニート(真性ニート)に関する考察など、興味深い内容もみられるが、ここでは、気になる論点を一つだけ取り上げる。 内田氏は、

    内田樹「下流志向 学ばない子供たち 働かない若者たち」 - 備忘録
  • 下流社会論の陥穽 - 備忘録

    下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書) 作者: 三浦展出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/09/20メディア: 新書購入: 2人 クリック: 125回この商品を含むブログ (663件) を見る 三浦展「下流社会」では、内閣府「国民生活に関する世論調査」(以下、単に「世論調査」という。)の2004年までのデータに基づき、生活の程度が「中の中」とする者の割合が1990年代後半から著しく低下する一方で、「中の下」や「下」が増えていることを重視している。これほどの現象が生じたのは、「戦後の歴史の中でも初めての傾向」であると指摘し、国民全体が下流意識を持っているのではなく、「中の上」以上のものだけが高い状態を維持しており、これをもって「階層格差の拡大を意識面から裏付けるデータ」であるとしている。 同書では、今後、日人人口の約15%程度が、自分自身を「中の上」以上とみなすようになる

  • 佐藤俊樹「不平等社会日本 さよなら総中流」 - 備忘録

    不平等社会日―さよなら総中流 (中公新書) 作者: 佐藤俊樹出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/06/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 54回この商品を含むブログ (108件) を見るコメント 格差問題に関して、書が主たる関心を呼んだのは、年功序列的な雇用管理によって生じる「経路依存性」をコントロールした職業の世代間相関性をみると、ホワイトカラー上位層職種(W雇上)では、「団塊の世代」から、職業の「閉鎖性」は高まったという事実を提示したこと。高度経済成長等を背景に、非W雇上出身(父親がW雇上)からのW雇上へのなりやすさは高まっている一方で、「団塊の世代」では、W雇上出身の者が多いので、W雇上出身がW雇上になりやすいと、非W雇上出身の者がそこから締め出される。これによって、この「閉鎖性」は生じたことが示されている。この含意に対しては、例えば、盛山和夫氏の批判な

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  • 「中間所得層」消費ウェイトの高まりの真相 - 備忘録

    「中間所得層のウェイトが高まる日の消費 」(02/22付けエントリー)では、 1999年から2004年にかけて、年収300〜600万円の中間所得層の構成比が高まり、当該層では同時に1世帯当たりの消費支出をも増加させている ことを指摘したが、この「中間所得層」という言葉は、文章から明らかなように、年間収入の絶対水準から当該年収階級をそのように命名したものである。実際には、グラフから分かるように、所得水準が全体的に下方へシフトしているので、ラチェット効果が働けば、より年収の高い層からの移行によってその構成が高まった当該層の1世帯当たり消費支出が増加することはあり得る。 ここでは視点を変え、年間収入の相対水準から、『中間所得層』の消費支出の構成がどう変化したかをみることとし、年間収入5分位階級別のデータを用いて同様の分析を行ったのが下の表。 これをみると、年収階級別の消費分布には殆ど変化がない

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  • 橘木俊詔「労働のセーフティネットと失業減政策」(ESP 2001.11発行) - 備忘録

    当時のESRI経済政策フォーラム「労働市場とセーフティネット」の基調講演から、橘木氏のインフレ・ターゲッティング政策に対する考え方等についてのメモ。*1 一般的に、物価下落は消費者にとって好ましいことであり、デフレはこれに関する限り悪ではない。悪いのは、企業収益の下落により企業の活力及び労働需要が低下すること。これは失業率増大の大きな要因。 しかし、国民が経済成長率がゼロ(或いはマイナス1%前後)であることを許容するのであれば、「強硬な政策(例えばインフレ・ターゲッティング)」をとる必要はなく、むしろ、望まざる高いインフレ率の帰結の方が心配。 残る失業の存在についてはワーク・シェアリングで解決する。これは、既に雇用されている人たちの僅かの犠牲によって失業している人たちの雇用を可能にするもの。(国民が)経済成長率がゼロ(或いはマイナス1%前後)の世界と共通する精神を持つことを期待。これが実現

    橘木俊詔「労働のセーフティネットと失業減政策」(ESP 2001.11発行) - 備忘録
  • 労働分配率をめぐるいくつかの考察 - 備忘録

    1.労働分配率の適正水準とは? 労働分配率に関する議論が近年喧しいが、結論的には、労働分配率に適正水準などというものはない。労働分配率は、賃金の粘着性の存在から、景気循環に応じて変動する(企業の生み出す付加価値が高まる好況期に低下し、不況期には逆に高まる)というのが定型的な事実である。 また、経済分析において、通常一般に使用されるコブ・ダグラス型生産関数を基に考えれば、労働分配率は、経済成長への労働の寄与が大きくなれば高まり、小さくなれば低くなる。これは、労働への配分が労働の限界生産力となる(逆に資への配分は資の限界生産力となる)仮定からの当然の帰結である。つまり、労働節約的な設備投資を行えば、当然、労働分配率は低下する。このように、労働分配率は、長期均衡の観点からみても変動して当然なのである。 一方、人口減少社会では、従業員の賃金が高まるからウマ〜というかの理論は、ハロッド・ドーマー

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  • 「労働力の再生産」を組み込んだ経済モデル - 備忘録

    非常に今更感はあるのですが、「一部門、固定係数生産関数による日経済の現状の分析の試み(その1、その2)」(労働、社会問題)*1において指摘していないこのモデルの重要な特性は、「労働力の再生産」、つまり出生・死亡を通じた(労働力)人口の変動が経済モデルの中で明示的に組み込まれていることですね。人口減少社会の中では、こうした特性を持つモデルの構築は、もしかしたら、結構重要なポイントなのかもしれない、と今更ながら思っているわけです。(ここでは、ハロッド・ドーマー型の生産関数を用いた試み、という点が強調されていますが、必ずしもそれに拘らないモデル構築も可能かもしれない。) このモデルでは、総需要が出生に影響を及ぼすが、これは現実にも妥当する。例えば、近年の若年層での非正規雇用の拡大・低所得層の構成比の高まりは、これらの層の婚姻が困難になることを通じて出生率にも負の影響を与えている。逆に、総需要が

    「労働力の再生産」を組み込んだ経済モデル - 備忘録