貿易は国の運命に決定的な影響を及ぼす。なぜなら、それが成長加速のカギになっているからだ。それを過去400年の中国史の中で感じさせるのが、岡本隆司先生の『「中国」の形成 現代への展望』だ。通史の一冊であって、経済史的な読み方をするのは、マニアックなエコノミストに限られようが、技術と資本があれば成長できるとする教科書的な見方とは異なる経済の実相がそこにはある。 ……… まず、明の滅亡からして、倭寇という名の貿易を禁圧しようとして失敗したところにある。そもそもの出自が商業集団の清は、「互市」という形で現実を受け入れ、秩序を回復していく。それくらい貿易の利益は強烈で、力で抑え込むことは難しい。この強烈さが西洋では大航海時代を生み出し、資金集めが資本主義を形作り、産業革命と帝国主義へと結びつき、近代の中国に衝撃をもたらす。ロシアの東進も、毛皮の貿易の利益が大きくなったがゆえだ。 岡本先生は、康熙の不