日本の研究力の低下、その一因として博士課程進学者の減少が指摘されている(科学技術・学術政策研究所, 2023)(注1)。そうした中、ここ数年、政府の「骨太方針」は、博士人材の育成や支援に言及している。特に2023年の「骨太方針」は、優秀な若者が博士を志す環境を実現するため、「博士課程学生の処遇向上、挑戦的な研究に専念できる環境の確保、博士号取得者が産業界等を含め幅広く活躍できるキャリアパス整備等」の支援を強化すると述べている(注2)。こうした動きを見ると、博士課程卒業者は労働市場において不遇な状況にあるという印象を受けるが、実際はどうなのだろうか? 高学歴者の賃金に関する研究 欧米では博士学位を持つ労働者の賃金に関する実証研究がいくつか存在し(e.g., Jaeger and Page, 1996; Walker and Zhu, 2011; Engbom and Moser, 2017)
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