ジョン・ラセターと宮﨑駿 flickr : Some Rights Reserved by Bob Owen https://www.flickr.com/photos/bobowen/5247167137/sizes/l 2014年。宮﨑駿がアカデミー名誉賞を受賞した。 日本人では黒澤明以来の快挙であり、アニメ監督としては史上初となる。 アカデミー名誉賞は、三大映画祭を超えるアカデミー賞のなかでもさらに特別だ。この賞を得るともう他の賞は授与されなくなる、もしくは貰う意味がなくなるとすら言われている。映画界のノーベル賞といっていいかもしれない。 「アニメ史上、この芸術形式に誰よりも貢献した人物がいます。まずウォルト・ディズニー。そして宮崎駿さんです」 配給を担当したディズニー社を代表してレッドカーペットの壇上に立ったジョン・ラセターCCO(チーフクリエイティブオフィサー)が献辞を並べるのを
連載第58回 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(10)〜若き日の挫折と、音楽産業を救うふたつの原石 ▲Bob Dylan『The Times They Are A-Changin'』(1964)。ジョブズは、この歌の詞を朗読して初代Macを発表した。その歌詞は、変革の時代にあるいまの音楽産業のことを歌っていると言われても全く違和感がない。 本連載も最終回が迫ってきた。いま、音楽産業はエジソンが世界初のメジャーレーベルを立ち上げて以来、初めての大転換を経験しつつある。 それはiTunesが興した以上の何かであり、そこには21世紀のエジソン、スティーブ・ジョブズの若き日の挫折と、壮年期の人格的成長が深く関わっている。今回、書いていく話はそういったものである。 3年前、アクセスモデル時代の到来を日本に問うべく、Pandora、Spotifyの成り立ちを詳らかにした。爾来、およ
ARMとiPodとiPhoneと https://www.flickr.com/photos/tsevis/2313082920/sizes/z/ Flickr Some rights reserved by tsevis ARM社。 Appleがジョイントベンチャーで立ち上げた会社だ。かつて若きジョブズを追放したスカリーが社長を務めた時代にあたる。AppleのNewtonはタッチスクリーン式携帯ガジェットの先駆けだったが、ARMの設計したマイクロプロセッサを心臓に持っていた。以来、ARMは携帯デバイス向けのCPU設計に特化している。孫正義率いるソフトバンクが3兆円で買収し、その名は日本の人口に膾炙するところとなった。 iPodもまたARM設計のCPUで動いていた。いっぽうマッキントッシュのCPUをつくるインテルには、携帯向けのCPUはない。OS Xをインテル用からARM用に書き換える大作
連載第56回 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(9)〜Appleチルドレンと、Pandoraと、日本で進む音楽離れと[上] ▲日本の若年層では、無料で音楽を聴くよりも深刻なトレンドが発生している。音楽離れだ 「これ、読みましたか?」 青山のとある店での夜だった。Aさんは料理の並ぶ上から、分厚いレポートを筆者に見せた。今年は会食の機会が多い。節目の年だからだろう。音楽産業の今後について、真剣な相談がほとんどである。 「今回はずいぶんと気合の入った調査ですね」 パラパラとめくり、筆者は毎年確認する、ある項目を探した。ふだんは毎年3月に一般公開されるのだが、今年は遅れているようだ。レコ協が毎年出している『音楽メディアユーザー実態調査』である(※1)。 「こんなに詳しくなると読むのが大変なんですけどね」と笑うAさんに微笑み返しながら、目当ての項目に辿り着いた。 「ここ、かなり増
連載第55回 iTunesでアルバム崩壊、YouTubeでシングル無料化。次に来るプレイリストの時代は稼げるか 2015年は勝負の年 2015年、レコード産業は勝負の年になるだろう。世界はYouTube Music Keyによって。日本はLINE MUSIC、AWAなどの新サービスによって。6年前、欧州メジャーレーベルはSpotifyで社会実験を始めたが、日本の新サービスは、Spotifyのフリーミアムモデルに匹敵する大胆なものも出てきそうだ。 6年前といえば、スマートフォンの普及が始まった2009年だ。この年、我が国で音楽配信の主力だった着うたの総崩れがはじまった。以来、日本ではCDと音楽配信、両方がマイナスを続けた。有料音楽配信売上は2009年から2013年でー54%、それは世界でも稀な事態であった。 しかし昨年(2014年)、日本のデジタル売上は4年ぶりの増収を迎えた。 その推進力は
連載第51回 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(7)〜ジョブズの決断/10周年を迎えるYouTube誕生の舞台裏 iPhone計画の決断。次なる革命へ >> 『未来は音楽が連れてくる』完全版 第二巻が、本日10/31発売開始! ▲ジョニー・キャッシュによるビートルズ「In My Life」のカヴァー。U2スペシャル・エディションの発表イベントで、開演前に流れていた。ジョブズにとって「音楽の力を確信させてくれる曲」のひとつだった 「そこのロッキングチェアにずっと座ってたよ。歩く気力もなかった」 リビングにいたジョブズは、作家のアイザックソンにそう言った(※1)。押しのけても絡みつく倦怠感に、やがて来る死を意識せざるをえなかったろう。膵臓の半分を摘出する手術は、ジョブズの体からエネルギーをほとんど奪い取ってしまった。肝臓に三箇所、転移がみつかっていた。 「結局、エネルギーが
連載第50回 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(6)〜NaspterからFacebook、Spotifyへ。着うたからiTunesフォン、iPhoneへ マーク・ザッカーバーグとショーン・パーカーの出会い >> 「未来は音楽が連れてくる 」第二巻発売! Photo : flickr https://flic.kr/p/dp7Wdk https://flic.kr/p/awStXP Some rights reserved by kris krug, JD Lasica. 「ホームレスになった。ほとんど破産してたんだ」 2001年の夏。後にFacebookの初代社長となるショーン・パーカーはNapster社から追放された。失業の上、Napster裁判の弁護士費用で借金を背負っていた(連載第43回)。 「友だちの家に二週間ほど置いてもらい、それから出て行くということを繰り返
U2 ボノ「アップルがアルバムの代金を支払ってくれた」「無料の音楽なんて信じていない。音楽は神聖なもの」 posted by Jay Kogami]]> textU2が最新アルバムをiTunes限定で無料配信する前代未聞の取り組みを開始。ボノ「アップルがアルバムの代金を支払ってくれた」]]> imagenonetext 「Songs of Innocence」はU2にとって2009年にリリースした「No Line on the Horizon」から5年ぶりとなる、待望の新作。 発表会で新曲「The Miracle (of Joey Ramone)」を披露したU2のボーカル、ボノは演奏後ステージでティム・クックCEOと共に「iTunes限定で無料配信」を開始するサプライズ発言し、来場者やネットの視聴者、U2のファンを沸かせました。 ティム・クックCEOは今回のU2とのコラボレーションを「過去
現在、全国7都市を「ぐるんぐるん」巡るアリーナツアー『Perfume 5th Tour 2014「ぐるんぐるん」supported by チョコラ BB』で日本中を沸かせているPerfume。いよいよ10月31日からスタートする3度目のワールドツアー「Perfume WORLD TOUR 3rd」でのライブ初上陸を目前に、そんな彼女達の全米デビューが決定した。 アメリカでPerfumeがデビューする事が決定したのは、EDMの老舗レーベルAstralwerks(アストラルワークス)。Astralwerksはニューヨークを拠点とするEDMに特化したレーベルで、1993年に設立されて以降、シーンをリードし続けているEDM界には無くてはならない重要なレーベルだ。同レーベルには、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリム、クラフトワーク、デヴィッド・ゲッタ、カイリー・ミノーグ、ペットショップ・ボー
連載第49回 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの(5)〜iTunesを超える革命へ。アクセスモデル誕生の物語 スマートフォンを予見していたジョブズ >> 「未来は音楽が連れてくる 」第二巻発売! 写真 : flickr https://flic.kr/p/oioKiy 2014 Somerights reserved by ereyesleblanc. 「スティーブ、これはなんだい?」 執務室を訪れたスカリーがジョブズに尋ねた。マッキントッシュが誕生して間もない頃だ(※1)。 「これは未来だ。ぜひあなたに見てほしい」 そう答えると、ジョブズは立ち上がって机上のベルベットを取り払った。小さな端末らしきものが顕れた。キーボードはついていない。端末を覆うスクリーンを、直接タッチして操作できるのだろうか。HP社がタッチパネル式のデスクトップPCを商品化したばかりだった(※2)。
>> 「未来は音楽が連れてくる 」 第一巻発売! ▲トニー・ファデル。「iPodの父」と呼ばれている。mp3プレーヤーと音楽配信を組み合わせた理想の音楽ビジネスをSony、サムスン、フィリップスに提案したが断られ、Appleに行ってiPodを創った。iモードや着うた、Walkmanケータイを調べるうちに「iPodが携帯電話に徹底的にやられる可能性」を感じたファデルは、携帯電話事業に反対だったジョブズを説き伏せ、iPhone計画が始動することになった。 Photo : flickr. 2012 Some rights reserved by @naro https://flic.kr/p/dyziMC 歴史は希望と失望が織りなすタペストリーだ。 iTunesミュージックストアがアメリカでブレイクした2004年。世界のレコード産業売上が例年通り軒並み下がる中、デジタル売上の急騰したアメリカのみ
神は細部に宿る ▲「シルエットCM」の全シリーズ(13分)。iTunesの熱狂と共にあった、00年代半ばの音楽シーンが凝縮している。ジョブズは世界を変えるためにCMを活用したが、この卓越したタイアップは「iTunesで音楽を買って、iPodで聴くのがかっこいい」という価値観を定着させ、デジタルが違法から合法へ向かう時代を切り拓いた。 ジョブズの仕事を振り返って痛感することは、本当に大事なことはスポットライトが当たる前に起きていることだ。 「ストーンズをゲットできたのは、スティーブのおかげさ」 Appleでコンテンツを担当していたクリス・ベルはいう(※1)。 「スティーブがストーンズやサラ・マクラクランを口説いたのをお手本に、僕らはアーティストと交渉する専門のグループをつくって、他にはない曲を集めたんだ」 トップ同士で大筋を決めたら、あとは現場が細かいことを擦り合わせていく。それは経営者の通
Image : Flickr. Some rights reserved by Mark Mathosian. http://bit.ly/19RwEGD 受け継がれる革新の炎 ある炎があって、それが燃え移ると全てが変わってしまう。 薙ぎ払い、輝き、感動が広がっていく。ひとたび炎の勢いが失せると、世界は停滞の闇に包まれる。しかし、その炎が失われることはない。人類共通ともいえる精神の燭台に燃え続けていて、松明をかざして聖火を取り、世界に再び光を与える者が現れる。 若き日のスティーブ・ジョブズにとっても、そうした存在はあった。シリコン・バレーの礎を築いたヒューレット・パッカードの二人や、エレクトロニクス業界を先導したSonyの盛田昭夫たちだ。 90年代後半。Appleに帰ってきた理由をジョブズは語ったことがある(※1)。 「業界が混迷しているからだ。まるでボートにタイヤをつけたような車を作って
▲Sony共同創業者の盛田昭夫と、Apple創業者のスティーブ・ジョブズ。カンファレンスの冒頭で、ジョブズは盛田の死を追悼し、「大きな影響を受けた」と讃えた。 Sonyスピリットを受け継いだApple 1999年10月5日。サンフランシスコのAppleカンファレンス。 前年にiMacで完全復活を遂げたジョブズは、熱狂に包まれ登壇した。スクリーンに映し出された巨大な林檎のロゴを背にして、彼は語り始めた。 「盛田昭夫氏は、私とAppleのスタッフに多大なる影響を与えました。先の日曜日、彼が世を去りました」 『Think different』のフレーズと共に、Sonyの共同創業者の写真が、林檎のロゴに変わってスクリーンに映し出された(* http://youtu.be/K7WmPz5kgjc )。 「スティーブはSonyになりたかったんだ」 Appleの二代目CEO、ジョン・スカリーの言葉だ。ジ
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