『心配御無用』 旦那様が使用人を集めて見せたのは、そう書かれた一枚の書置きだった。 お嬢様が書置きを残すのは初めてだった。 旦那様がそれを発見したのは朝。俺もちょうど朝の定時連絡を待てどもなんの音沙汰もなく困っていたのと同時刻である。 奔放っぷりの一方で彼女はまさしく健康優良児で、夜の帰りが多少遅くなることはあれど町に繰り出すという感じではなかったし、朝寝坊をしたことは一度もない。 旦那様が強硬な手段で彼女に言うことを聞かせるということをしなかったのは、そういう本当に悪い、堕落みたいなものを跳ねのける力があると見込んでのことだったのだろうと、後になれば思う。 「誰か、心当たりのある者はいるか」 旦那様は玄関に集めた使用人たちに、一通り目を配る。 半分くらいの視線は俺に集まっている。だけど俺はもう報告を済ませていて、昨晩の段階でお嬢様が部屋に戻ったということしかわからなかったから、下を向いた