去年の夏のことだ。私の住んでいる地域にも 「ろうそん」が出来たと母親から聞いた。 それで早朝にジョギングがてら物見遊山のつもりで行ってみたら、 そこにあったのは茅葺きの一軒家だった。 玄関に看板で「老村」と書いてある。 私は早速入店することにした。もちろん自動ドアではないので 自力で開けなければならない。中に入った途端、魚の生臭い匂いと コロッケを揚げるシュウシュウした音が渾然一体となって迫って来た。 店内は駄菓子屋を少し広くして、余ったスペースで 鮮魚や煮物や揚げ物や野菜を売っているというような構造だ。 空調は効いていないのに涼しい。 「いらっしゃいませ」と奥から老婆がやって来た。 老村クルーのあきこオババだ。 「おはようさん。有難うね。良かったら見て行ってちょうだい」 「そうですね。どれにしようかな……」 駄菓子を食うような年齢ではない。私はしばらく眺めていた。 店内には BGM は流
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