「突然母が、『私ね、15の時から、女優やってるの』と言い出したのです。正直、びっくりしました。15から女優をやっているのは、母ではなく、私ですから」(撮影:大河内禎) 女優の原田美枝子さんが制作・撮影・編集・監督を務めた映画『女優 原田ヒサ子』は、自身の母を主役にした短編ドキュメンタリー作品だ。認知症が進んだ母の生涯を、映像に残そうとした理由とは(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎) 【写真】孫夫妻と語らうヒサ子さん * * * * * * * ◆ある日飛び出した意外な一言 90歳になる母に認知症の症状が表れ始めたのは、80を過ぎた頃です。キャッシュカードの暗証番号がわからなくなることが何度か続き、そのたびに一緒に銀行に行ってカードを作り直しました。 当時まだ父が健在で、両親はうちから歩いて20分くらいのところに住んでいました。なんとか二人で生活できていましたし、私も仕事が忙しかったので、きめ