文豪、夏目漱石の直筆署名が、箱根の老舗旅館「富士屋ホテル」の宿帳(レジスターブック)に残されていたことが、99年ぶりに確認された。1915(大正4)年11月16日付で「K Natsume」と英語で記されている。「K」は漱石の本名「金之助」の頭文字だ。漱石は箱根の旅を日記に書き残しているが、署名はVIP用ではなく、一般客用に紛れてひっそりと埋もれていた。 発見したのは、元京都府立総合資料館長の中山禎輝(よしてる)さん(75)。漱石好きが高じて、日記や書簡を手がかりに20年ほど地元・京都で漱石の足跡を探していた。だが、一向に見つからない。「ふと思いついた」のが、箱根の富士屋ホテルだった。 昨秋、妻と泊まりにでかけ、「朝富士屋を出て湯本へ行く途中」と始まる1915年11月17日付の日記をスタッフに見せた。史料展示室に保管されていた宿帳を調べてもらったところ、アルファベットの署名を発見。日記の日付