1981年まで日本人の死因の一位だった脳卒中は癌にその座を譲った。現在日本人の三人に一人は、癌で死ぬ。脳卒中が比較的減ったのは、それを予防する医療体制や、たんぱく質摂取を容易にする栄養状況の改善などが理由だろうが、むしろ癌が増えた理由のほうが大きい。高齢化である。癌は高齢者の病気だとは言えないし、種という視点から見れば老化の一種だとも言えないが、高齢者が増えれば、癌に罹患する人は統計的には増える。私たちが長生きをするにつれ、癌で命を閉じる人は多くなる。人々の人生の最後の主要な関心のひとつは癌となる。 ならば私たちは自分の人生と死を知るためにも、より癌について知っておくべきだろうとも言える。だが、その最適な書籍は何か、と問われると困惑したものだった。もちろん、癌についてはいろいろな書籍に書かれてきた。ネットにも情報はあふれている。なのに、患者の視点を配慮し、今後社会がどう癌と取り組むかという