<早く平和になればよいのにと話をした>。フィリピン・ネグロス島に出征した父の戦記には、1944年12月24日のクリスマスイブに休戦し、現地ゲリラとつかの間語らいの場を持ったことが記されていた。公式記録に残らない戦場の秘話。亡父の残した戦記や手帳を「千の証言」に寄せた大津市の足立和子さん(67)は「読み返すたびに、敵とも心を通わせた父の優しさが胸によみがえります」と語る。【竹下理子】 父の正明さんは終戦後の45年12月に帰国。結婚して和子さんら4人の子をもうけた。裕福ではなかったが、家族思いだった。84年11月に64歳で他界した。 戦記は遺品の中から見つかった。幼いころ風呂でよく戦争体験を聞いたが、その存在は知らなかった。茶色い厚手の表紙に<ネグロス島戦記(中略)陸軍軍曹 足立正明>とある。ノート約30ページに自身の生い立ちや島での出来事が記されていた。もう一冊、手帳も出てきた。島の風景を描