その瞬間を、獨協医科大学 教授の坂田信裕氏はこう振り返る。「頭が真っ白になり、そして気持ちが真っ暗になった」――。 坂田氏はその時、「人型ロボットプログラミング入門」と題する医学生向け講義の一環で、鹿児島県肝属郡肝付町にいた。同氏はかねてソフトバンクグループの「Pepper」など、コミュニケーションロボットの介護応用に関する研究を手掛けている(関連記事)。その演習の場として、同町の高齢者施設を選んだのだ。 肝付町は、小惑星探査機「はやぶさ」の打ち上げで知られる内之浦宇宙空間観測所がある町。高齢化率が50%近くと非常に高い町で、介護ロボットの実証の場ともなっている。 「ITヘルスケア学会 第10回記念学術大会」(2016年5月21~22日)のシンポジウム「医療・介護を支える最新のロボット技術」に登壇した坂田氏が語ったのは、この町で起きた次のような顛末である。
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