83歳の女子高生球児が3月1日、卒業式を迎える。川崎市立高津高校定時制4年の上中別府(かみなかべっぷ)チエさんだ。夫の死をきっかけに学生に復帰、勉学に励みながら、全国を目指して10代の仲間と白球を追いかけた。「温かい仲間に囲まれ、勉強も野球もできて本当に幸せだった」。文武両道の充実した日々を今、しみじみと思い出している。(西尾美穂子) 全国大会出場をかけた昨年6月23日の高校定時制通信制軟式野球の神奈川県予選決勝。1死満塁のピンチを迎えた六回裏、出番がやってきた。背番号12をつけたピンストライプのユニホーム姿で、ベンチから伝令としてマウンドに向かって駆け出すと、球場は大歓声に包まれた。 「いつも通りいこう」。孫よりも若いエースの尻をポンとたたき、気合を入れた。試合には惜敗したが、泣き続けるナインに「人生にはいろいろある。一番だけがいいわけじゃない。これをバネにがんばって」。涙を堪えて励まし