「外交の安倍」の目玉とも言える「自由で開かれたインド太平洋戦略」(以下「戦略」)が機能不全に陥っている。頼みのインドが「対中包囲網」形成に冷淡なこと。さらに安倍首相が対中関係改善を進めれば「対中包囲網」の「狙い」が曖昧化し、悪化する米中関係のなかで日本が「板挟み」状態になるからである。 経済協力と安保の両面政策 中国の「一帯一路」構想は聞いたことがあっても、「インド太平洋戦略」を知る人は少ないのではないか。政府関係者ですら、その目的と内容をクリアーに説明できないのだから当然かもしれない。 関連記事:安倍政権が一転、中国の「一帯一路」支持で動き出す経済界 安倍首相がこの構想を明らかにしたのは2016年8月末、ケニアで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)での基調演説だった。演説は二つの部分からなる。 第一に、東アジアから南アジア~中東~アフリカに至る広大な地域で、インフラ整備、貿易・投資、