対談本はこの世に数多く出ているが、質的にはピンからキリまで玉石混交なジャンルである。最悪のケースとしては、忙しくて文章を書いている暇もない人気の著者や著名人を組み合わせて、その場で即興の言葉を拝借する。お互いのことをよく知らないまま表層的な会話に終始し、それっぽいまとめがあって終わってしまい、読後には釈然としない気持ちが残ることになる。 いやなに全ての対談本がそのような粗製乱造された、低コストで売れる本──であると言っているわけではない。何を隠そう本書『世界の辺境とハードボイルド室町時代』も対談本である。もちろん本書の場合、「お手軽に売れる本をつくりましょうぜグヘヘ」などという経緯を辿っていない(そんな経緯は本書に限らずどこにもないと思われるが)。 それではどのような経緯があったのかといえば、本書『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、たまたま編集者が同席した場でノンフィクション作家であ