ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (27)

  • 2055年の未来の食事の風景はどうなっているのか?──『クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食』 - 基本読書

    クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来 作者:石川 伸一,石川 繭子グラフィック社Amazon仮想世界やAIなど未来により発展していくとみられる技術はいくつもあるが、そのうちのひとつに「3Dプリンタ」がある。これは3DCGなどで作られた3次元のデータを元に、断面形状を積層していくことで(それ以外の方法もあるかもしれないが、わからん)立体造形することができる機器を総称したもので、難しいことを抜きにして言えば「複雑な構造体やパーツでもソフトウェアからすぐにできちゃう機械」である。 最近よく話題になるのは「家」の生成だ。通常一軒の家を建てるにはコンクリートを流し込んだり骨組みを組んだりと様々な手間と技術と時間がかかるが、3Dプリンタなら3次元の家のデータと素材を用意したらあとはそれを使ってぺっと出力するだけでいい。で、こうした3Dプリンタで生成できるのは家の

    2055年の未来の食事の風景はどうなっているのか?──『クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食』 - 基本読書
  • 地球がどれほど劇的な変化に見舞われてきたか、広範な科学の知見を動員し描写する地球史ノンフィクション――『素晴らしき別世界 地球と生命の5億年』 - 基本読書

    素晴らしき別世界 地球と生命の5億年 作者:トーマス・ハリデイ山と渓谷社Amazon※山と渓谷社からの依頼で山と渓谷社のnote用に書いた書評ですが大変おもしろいだったので自分のブログ用にちょこちょこと書き換え、許可を得て転載しています われわれは自分の周りの環境を「当たり前のもの」として受け止めがちだ。 何しろ先祖の時代から日列島は日列島だし、一日は24時間だし、気候変動や災害による水位の上昇、地形の変動こそあれど、世界の構成──大気中の酸素・二酸化炭素濃度、大陸数、生物の数──に大きな変化はない。しかし、5億年の物差しでみると、過去と現在の地球には、「別世界」と表現しても過言ではないほどの変化が起こってきた。今の六大陸もかつては繋がっていて、陸伝いに移動できたし、そうした世界では、当然植物や生物はわれわれの想像を遥かに超えた形態をみせる。 というわけで、書『素晴らしき別世界』は

    地球がどれほど劇的な変化に見舞われてきたか、広範な科学の知見を動員し描写する地球史ノンフィクション――『素晴らしき別世界 地球と生命の5億年』 - 基本読書
  • 毒はどのように人間を死に至らしめるのか?──『毒殺の化学:世界を震撼させた11の毒』 - 基本読書

    毒殺の化学:世界を震撼させた11の毒 作者:ニール ブラッドベリー青土社Amazonこの『毒殺の化学:世界を震撼させた11の毒』は、その書名の通りに人間を毒殺するために用いられた11の毒について書かれた一冊になる。毒殺では常套手段といえる青酸カリやトリカブトはもちろん、一般的には糖尿病治療で用いられるインスリンなど、それらがどのように人体を死に至らしめるのかという科学。そして、歴史を振り返ったときにその毒がどう殺人に用いられてきたのかが合わせて語られていく。 取り上げられているエピソードは単なる毒殺ではなく暗殺であったり、不特定多数に向けた無差別毒殺テロにみせかけて実は特定の狙いがいたというはた迷惑なケースであったりと、犯罪・事件的に話題性にとんだものばかりで、科学と犯罪捜査で一度で二度おいしい構成になっている。おもしろいのが、発覚したケースでないと誰にも知られぬまま忘れられていくだけだか

    毒はどのように人間を死に至らしめるのか?──『毒殺の化学:世界を震撼させた11の毒』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2023/08/31
    フグ毒とトリカブトを組み合わせて発症を遅らせたリアルサスペンスは載ってるかなぁ
  • 『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』という本を刊行します。 - 基本読書

    「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門 作者:冬木 糸一ダイヤモンド社Amazonこのブログ「基読書」を書いている冬木糸一です。3月1日に、『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』というをダイヤモンド社から刊行することになったので、その告知文を下記につらつらと書いていきます。このブログの読者にはまず楽しんでもらえる内容なので、ぜひ告知分だけでも読んでいってください。 の外観。440ページ超えなのでけっこう分厚い SF超入門とは何なのか 「SF超入門」と銘打っているわけなので、当然SFに入門するためのになる。歴史や作家など入門といっても無数の入り口があるわけだけれども、今回はいわゆるSF小説のガイド的な内容になっている。ただ、「SF初心者はこれを読め!」といって初心者向けを語る、ガイド記事を拡張した内容とは異なるアプローチでを選んでいる。 たとえば

    『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』という本を刊行します。 - 基本読書
  • 誰もがテレポートを実施でき、距離が存在しなくなった世界をどこまでも追求する、エネルギーに満ち溢れた四年ぶりのSFコンテスト受賞作──『スター・シェイカー』 - 基本読書

    スター・シェイカー 作者:人間 六度早川書房Amazonこの『スター・シェイカー』は、三回に渡って大賞が出なかった(優秀賞は出てたけど)ハヤカワSFコンテスト久しぶりの大賞受賞作にして、いかにもデビュー作らしく、荒削りながらも圧倒的な才能を見せつけてくれる渾身のテレポートSF長篇だ。 テレポートといえばどれだけの距離であっても瞬時に移動することをさすが、それが出来たとしても、少し考えればそれってどんな仕組みなの? と疑問を持つはずだ。たとえば「瞬時に移動する」といっても、その間に地球は時速1600kmで自転しながら太陽の周りを時速10万kmで公転しているわけで、宇宙の絶対座標で移動しようとしたら地球に置き去りにされる。また、テレポートした時体はどこを通るのか、テレポートした先に何かがあったら──など疑問はつきないが、作はそうしたテレポートの疑問に答えを与えていくうちに、宇宙の真理にまで到

    誰もがテレポートを実施でき、距離が存在しなくなった世界をどこまでも追求する、エネルギーに満ち溢れた四年ぶりのSFコンテスト受賞作──『スター・シェイカー』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2022/02/12
  • ある日を境に誰も死ななくなった社会で、何が起こるのか?──『だれも死なない日』 - 基本読書

    だれも死なない日 作者:ジョゼ・サラマーゴ河出書房新社Amazonこの『だれも死なない日』は、ある都市の住人ほぼ全員がなぜか突如として失明してしまった状況を描き出す『白の闇』などで知られる、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴによって2005年に刊行された作品である。こちらは、『白の闇』と同じく通常ありえない特殊な状況を通して思考実験的に社会を描き出していく作品で、こちらのテーマは、「人から死が奪われたら何が起こってしまうのか」である。 あらすじなど 作は『翌日、人はだれも死ななかった』という印象的な一文から始まる。人間、いつ死ぬかは正確にはわからないとはいえ、いずれ死ぬのは間違いないので、一定以上の人間が居住している都市・国であれば、統計的には毎日一定の人間が死に続ける。それが、新年の1月1日を境に誰も死ななくなるのである。致死的な事故も、病気も、誰の命も奪わない。それはいったいど

    ある日を境に誰も死ななくなった社会で、何が起こるのか?──『だれも死なない日』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2021/09/30
    前読んだ「千歳の坂も」では、死ぬ事に莫大な税金が掛かるようになって健康維持が強制される息苦しい社会になっていた
  • 階層の異なる知性間の大戦を描き出す『天元突破グレンラガン』級のスペース・オペラ──『最終人類』 - 基本読書

    最終人類 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ザック ジョーダン発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版この『最終人類』は著者ザック・ジョーダンのデビュー作にして、最後の人類となった少女が同胞を求めて多様な種族が存在する宇宙を冒険していくスペース・オペラである。この世界にはネットワークと呼ばれる宇宙に飛び出した種属たちのコミュニティが存在するのだが、旧人類は何かをやらかして滅亡させられてしまったらしい。 理由は不明だが人類最後の生き残りであるサーヤは、ウィドウ類のシェンヤに偶然拾われ、その後養女として育てられることになる。この世界では人類は忌み嫌われていて、生き残りの存在を知られると危険なので、サーヤは別の種を偽装しているのだが、ある日彼女の生まれを知っていると接触してくるものが現れ、彼女は銀河中を巻き込んだ争いに巻き込まれていくことになる──。と、あらすじをまとめるといかにも

    階層の異なる知性間の大戦を描き出す『天元突破グレンラガン』級のスペース・オペラ──『最終人類』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2021/03/26
  • 二〇一〇年代最注目のSF作家による、未来の海上都市を舞台にした〈分断〉と〈結合〉の物語──『黒魚都市』 - 基本読書

    黒魚【クロウオ】都市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:ミラー,サム・J.発売日: 2020/11/19メディア: 単行この『黒魚都市』は、2010年代にその頭角を現してきた、新時代のアメリカSF作家であるサム・J・ミラーによる二作目の長篇小説である。 チャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』『言語都市』、クリフォード・D・シマック『都市』、グレッグ・イーガンの『順列都市』、アーサー・C・クラーク『都市と星』──SF作品で題名に「都市」が入っているとそれだけでワクワクが止まらなくなってくる。それはやはり、SFがシンプルにストーリーを語るだけでなく、その世界観を魅せつけるものであり、SF作品で書名に「都市」を入れることは、この作品は「未来の都市、未来の世界をたっぷりと描写するぞ!」という宣言となっているからだろう。というわけでこの『黒魚都市』だが、期待にたがわぬ都市SFだった。 世界観な

    二〇一〇年代最注目のSF作家による、未来の海上都市を舞台にした〈分断〉と〈結合〉の物語──『黒魚都市』 - 基本読書
  • 不死を得た世界に、新たな神が現れる。フランス作家による未来への警告──『透明性』 - 基本読書

    透明性 作者:デュガン,マルク発売日: 2020/10/15メディア: 単行この『透明性』は、セネガル生まれのフランス人作家マルク・デュガンによる長篇小説である。書が長篇のフィクションとしては邦初紹介作となるが、これまで13作の小説を刊行していて、映画監督やジャーナリストとしても活躍する、フランスでは名声の確立した作家のようである。FBIのフーバー長官や、ロシアの原子力潜水艦についてなど、過去とその歴史をテーマにした、ノンフィクション的な小説が有名だった著者だが、今回の作品は、2068年頃を舞台にした近未来小説だ。 どのような世界なのか トランパランス(透明性)社の社長の女性とその12人の仲間たちが、世界の金融市場に前例のない攻勢をかけ、全人類を新時代へと投入させることを画策する場面から物語は始まる。彼らは世界の株式が大暴落する事件を起こし、事前に莫大な規模の空売りを仕掛け、グーグル

    不死を得た世界に、新たな神が現れる。フランス作家による未来への警告──『透明性』 - 基本読書
  • 時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』 - 基本読書

    時間旅行者のキャンディボックス (創元推理文庫) 作者:ケイト・マスカレナス発売日: 2020/09/10メディア: Kindle版この『時間旅行者のキャンディボックス』はケイト・マスカレナスのデビュー作にして、時間旅行が当たり前に存在する世界での様々な精神的な病を描き出す、時間旅行心理学とでもいうような領域を切り開いた珍しいタイプの時間SFである。 時間旅行はウェルズの『タイムマシン』以降SFではありふれたギミックだけれども、大抵の場合、時間旅行をして「何をなすのか」が重要になる。最近だと歴史改変合戦で自陣の勝利に導くことが目的のアナリー・ニューイッツ『タイムラインの殺人者』が出ているし、ジョディ・テイラー『歴史は不運の繰り返し』は、時間旅行を用いることで歴史事件の調査を行う人々が中心の物語である。一番よくあるのは、『STEINS;GATE』のように、大切な人を守るためや、死や世界の破

    時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』 - 基本読書
  • 都市ならではの生物多様性──『都市で進化する生物たち』 - 基本読書

    都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる 作者:スヒルトハウゼン,メノ発売日: 2020/08/18メディア: 単行通常、都市は人間以外の生物にとって良い環境とは思われていないだろう。緑や自然を切り開き、種の多様性を減少させる、必要悪的な存在である。野生の生き物たちの居場所は、都市から離れた自然豊かな世界中にあるのであって、都市ではない。 だが──、実はそうした都市の中には、むしろ「都市だからこその」生態が広がっている、と主張し、その概観を眺めていくのがこの『都市で進化する生物たち』である。進化は人が猿から進化していったように、何十、何百万年といった時間をかけて変化していくものだと思われていると思うが、実際には世代交代の速度が早ければ変化は数年、数十年といった短い単位でも現れる。たとえば、ガの200世代は100年未満で達成されるので、それだけの期間があれば自然選択は十分効

    都市ならではの生物多様性──『都市で進化する生物たち』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2020/09/04
    人類が滅びたら道連れになるやつだ
  • 続きがでなくて悲しかった最近のSFたち - 基本読書

    25日発売のSFマガジン2020年10月号、ハヤカワ文庫SF50周年号で、50周年を記念して渡邊利道さん、鳴庭真人さんと僕の3人で座談会をやっています。 SFマガジン 2020年 10 月号 発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌あまり明確なテーマはなくざっくばらんに最近のハヤカワ文庫SFや創元SF文庫について話そう、といったかんじで楽しく話したんですが、その座談会に備えて近年(5年ぐらい)のラインナップを見返したり、どのジャンルが何冊ぐらい出ているのかを数えていたら、「そういえばこれ続きが結局出なかったな……」とか、「というかなんで出なかったんだよ!!」と怨念が蘇ってきたので、供養代わりに記事にしようかと思います。ちなみに早川の編集さんにはその場で続きを出せ! といってます。 ラメズ・ナム『ネクサス(上・下)』 ネクサス(上) (ハヤカワ文庫SF) 作者:ラメズ ナム発売日: 2

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  • 二人殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界で起こる連続殺人事件を描き出す特殊設定ミステリ──『楽園とは探偵の不在なり』 - 基本読書

    楽園とは探偵の不在なり 作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle書は、メディアワークス文庫から『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビューした斜線堂有紀による、二人以上の人間を殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界の連続殺人事件を描き出す、特殊設定ミステリの長篇である。 特殊設定ミステリは大好物だが、作の場合は単なる事件とその解決に関連した特殊設定というだけでなく、導入によって社会構造自体が大きく変わる「世界全体に波及するタイプの特殊設定」で、一番好きな部類だ。なので、そのへんをどう描き出してくれるのか、あるいはあまり描き出さないのかと戦々恐々としながら読み始めたのだけど、いやーこれが期待通りの逸品! きちんとこの事象が発生することによって社会がどのように変化したのかを描き出し、なおかつそうした社会構造の変容それ自体が、事件やテーマ部分

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  • 資本主義の中に取り込まれてしまった最後の竜を描く、最高の現代ファンタジィ──『最後の竜殺し』 - 基本読書

    最後の竜殺し (竹書房文庫) 作者:フォード,ジャスパー発売日: 2020/05/28メディア: 文庫この『最後の竜殺し』は昨年、人口の99%以上が冬眠する極寒の世界をファンタジック&リリカルに描き出してみせた『雪降る夏空にきみと眠る』で(僕の)喝采をさらっていった作家、ジャスパー・フォードの最新邦訳である。いやー今回もめちゃくちゃへんてこで、それでいてポップで、とにかく楽しい、最高の現代ファンタジィだ。 書名に「最後の竜殺し」と入っているように、最後のドラゴンスレイヤーについての物語なのだけれども、いったいなにが「最後の」なのか? まず、作の舞台となっている時代は、資主義とエンタメが渦巻する現代。科学が発展し、それに伴ってなぜか魔法の力もどんどん弱まっている時代だ。たとえば、昔は天気予報で稼いでいた魔法使いたちも、もはやただの趣味にしかならない。魔法はどんどん面倒くさくなって「割りに

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  • 未来を考えるうえでもっとも重要な「世界人口の減少」というテーマ──『2050年 世界人口大減少』 - 基本読書

    2050年 世界人口大減少 作者:ダリル・ブリッカー,ジョン・イビットソン発売日: 2020/02/24メディア: 単行数十年後の世界人口がどうなっているのかというのは、最重要のトピックだ。何しろ、環境問題の悪化も、経済の状況も、文化も、都市化も、今世界で問題になっているすべてのことが人口に関係しているからだ。極端な話世界人口が10億人しかいないのであれば、少なくとも炭素排出量で大慌てする必要などまったくないのである。 そして、日を見てもらえればわかるように、今どんどん出生率は下がり、結果的に人口の数は長期に渡って下がり続けていくと予測されている。この流れは日だけでなく、中国でも韓国でも、東欧でもまったくかわらない。アフリカなど依然として出生率が高い国があるおかげで世界人口自体はまだ伸びているが、これが永遠に伸び続けていくと予測しする人はどこにもいない。だから、「世界人口が減少に向か

    未来を考えるうえでもっとも重要な「世界人口の減少」というテーマ──『2050年 世界人口大減少』 - 基本読書
  • 月から飛来したウィルスが船橋を恐怖に叩き落とす、圧巻のディザスター・ミステリ──『月の落とし子』 - 基本読書

    月の落とし子 作者: 穂波了,Kanehira K出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るこの『月の落とし子』は穂波了のデビュー作(ただし別名義でのデビュー作あり)にして、第9回アガサ・クリスティ賞の大賞受賞作である。刊行前からどうやら最初の舞台は月面からはじまるSFライクなミステリィであると聞いていて期待していたんだけど、実際に読んでみたらいやあこれは凄い! 「新人のデビュー作としては凄い」とかいう限定や留保なしに、単純に滅茶苦茶おもしろいエンターテイメント小説だ! ざっとあらすじを紹介する。 特に宇宙飛行士の月面探査中にウィルスの感染・発症が発覚する前半100ページは今年読んだ小説の中でもトップクラスの引き込み力で、そこで慣性をつけられてそのまま読み切ってしまった。物語冒頭はまず、栄光に満ちた人類のミッションから始まる。月面

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  • 特殊な能力者たちが運営する世代宇宙船《ノア》で起こった、〈ひき肉〉殺人事件を解き明かすディストピア・宇宙SF──『果てなき護り』 - 基本読書

    果てなき護り 上 (創元SF文庫) 作者: デイヴィッド・ラミレス,中村仁美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/10/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見る果てなき護り 下 (創元SF文庫) 作者: デイヴィッド・ラミレス,中村仁美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/10/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見るこの『果てなき護り』はフィリピン生まれでアメリカのカリフォルニア大学で分子生物学を専攻し、その後フィリピンに戻ってコンピュータサイエンスを院で学び、作家に転じるという異色の経歴を持つデイヴィッド・ラミレスのデビュー作である。 記事名通りの世代宇宙船ものでディストピアでミステリィっぽい作品でもあるのだけれども、その後巧緻な陰謀スリラーに転じ、世界の真実が明らかになるとともに革命についての物語になり、最後にはまたとんでもないところまでいって違っ

    特殊な能力者たちが運営する世代宇宙船《ノア》で起こった、〈ひき肉〉殺人事件を解き明かすディストピア・宇宙SF──『果てなき護り』 - 基本読書
    take1117
    take1117 2019/11/02
  • 我々は宇宙へと飛び出すべきなのか──『銀河帝国は必要か? ロボットと人類の未来』 - 基本読書

    銀河帝国は必要か? (ちくまプリマー新書) 作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2019/09/06メディア: 新書この商品を含むブログを見るアシモフの〈ファウンデーション〉シリーズを中心としたSF作品をとっかかりに、ロボットや人工知能が不可避的に人類社会の中で欠かせないものになっていく、これからの倫理について考える一冊である。著者は『宇宙倫理学入門』の稲葉振一郎。中心的な問いかけは書名にもなっている「銀河帝国は必要か?」だが、それに対する答えを追求するというより(答えを出すと、基いらんよな……という話になってしまう)、それを問うことで様々な倫理課題をあぶり出すことにその旨味がある。 書では第一章「なぜロボットが問題になるのか?」で現代的なロボットの在り方について語った後、アシモフの諸作について語っていき、次第に書の主題となっている銀河帝国が存在するアシモフの〈フ

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  • 人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書

    雪降る夏空にきみと眠る (上) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る雪降る夏空にきみと眠る (下) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る『雪降る夏空にきみと眠る』はジャスパー・フォワードの久しぶりの邦訳作品にして、幻想、奇想、SF要素がてんこ盛りになった極上のオモシロ小説だ。その世界観の作り込み、プロットの巧妙さ、次から次へと明かされる驚きの事実とその演出、出てくるキャラクタはみなジョジョばりにアクが強くセリフ回しも最高と、どこを取り上げても超一級で、まず一言感想をいうなら「超おもしろい!!!!」って感じだ。

    人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書
  • 言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』 - 基本読書

    方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) 作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る言葉によって綴られた幻想の架空都市──とお題が出されれば、幻想文学ファンは息もつかせず「(カルヴィーノの)見えない都市ー!」と轟をあげると思うがここに邦訳として新鋭が誕生した。ルーマニアの作家、ギョルゲ・ササルマンによる『方形の円 偽説・都市生成論』である。計36個の架空都市が一つ数ページの中におさめられており、ページをめくるたびに想像だにしなかった都市の姿が立ち現れてくる。 一つ一つの都市の記述が短いのでおお! おお! と驚きつつページをめくっていくうちにあっという間に読み終わってしまう(紙のの長さが213ページなのもあり)。ただ、その内実はストーリーの展開というよりかは都市のスケッチに近

    言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』 - 基本読書