オランダがつくりあげたきわめて効率的な社会 1970年代までのオランダは、キリスト教と民主制(デモクラシー)の価値を奉じる保守政党が長期政権を握り、エリート官僚が国家を運営する中央集権的な「福祉国家」だった。保守派は社会の基盤として「家族」を重んじ、教会を中心とする地域の自治を尊重し、保守的な社会制度を守るために失業者(家族を支える男性の働き手)に手厚い所得保障を行なった。 経営者団体や労働組合も社会を構成する重要な一員とされ、労使の代表で構成される政治団体が政策の決定に大きく関与した。この時期のオランダ政治は、さまざまな業界団体や利害関係者が集まって全員が納得する合意を探る、日本とまったく同じやり方で運営されていたのだ。 ところが1980年代に入ると、第二次石油危機以降の不況と財政危機によって、従来の寛容な福祉モデルが機能しないことが明らかになってくる。とりわけ問題にされたのが失業給付で