師走の喧騒に包まれる夕刻の帝国ホテル。巨人軍・原監督との対談番組の収録を終え、彼女は現われた。収録直後の疲労感も相当にあったはずだが、そういう雰囲気は少しも見せず、パッと弾ける明るい笑顔と、折り目正しいごあいさつで、インタビューは始まった。 27歳という若さながら、とても冷静で、感情のコントロールが効いている。装いもシックで、凛とした雰囲気が辺りをはらう。それでいて、ふとした瞬間にたぎるような情熱の片鱗が垣間見られる。 子どもの頃から「ヤッピー」という可愛らしい愛称で親しまれ、何と「吹き矢」が趣味だというユニーク極まるこの女性こそ、今回の主役、将棋女流名人の矢内理絵子さん(日本将棋連盟)だ。 これまで30人に及ぶ各界の方々にインタビューさせて頂いたけれども、将棋の世界の方は初めての経験である。果たして、矢内さんとは、どのような人物なのだろうか? 矢内さんは、1980年埼玉県北部の行田市に