キューブリック全書 デイヴィッド・ヒューズ フィルムアート社 2001 David Hughes The Complete Kubrik 2000 [訳]内山一樹 他 スタンリー・キューブリックの才能にはいくらでも賛辞を尽くしたい。 曰く、サブリミナルの際にも挑んでいた『ロリータ』で、ネルソン・リドルに甘美きわまりない作曲をさせたのはさすがだった。曰く、ピーター・ジョージの『赤い殺意』という空軍飛行士の狂気を描いただけの原作を、よくも『博士の異常な愛情』ではサタイアにしてしまったものである。案の定、ロンドンで開かれる予定のワールド・プレミアは、直前のケネディ大統領暗殺で中止されることになる。 曰く、完璧きわまりない『2001年宇宙の旅』(これは是非とも原題「2001スペースオデッセイ」を生かしたい)は、その構想と細部のすべてを褒めたいが、とりわけ、裏返ったテクノフォビアの徹底追求と、観客の