矢をつがえ、弓を起こし、ゆっくりと引き、狙いを定め、放つ。 弓道はひたすらにこの動作を繰り返すスポーツだ。 よく勘違いされるが、弓道はアーチェリーのように中(あた)った的の場所によって得点が変動したりしない。手持ちの4本の矢の内、何本が中り、外れたかで結果が決まる。 超個人的な競技なので、他のスポーツに比べ、戦略性や読み合いなどのゲーム性は乏しい。また、応援も中ったときのみ仲間が一瞬発声するだけなので、試合会場は基本的に静寂に包まれている。 この弓道というスポーツに、私は高校で出会った。小中学校の6年間、野球に熱中してきたが、今回のテーマには野球より付き合いの短い弓道を選んだ。 野球について書いた方が、読んでくれる人は多いかもしれないとも思ったが、「スポーツがくれたもの」という言葉を見たときに、先に思い浮かんだのが弓道だったからだ。 ほとんどの学生が高校から始めるスポーツ、つまりは小中学校