(1)不思議の国、グルジア【佐藤優】 グルジア人には国家意識が余りない。西部のメグレリア痴呆と、かつてイベリア王国を名乗っていた中央部は、言葉も違う。さらにアバハジアがあり、グルジア人だがイスラム教徒の、アジャール人もいる。オセアチア人も抱えている。 国歌として確乎たる統一感がない。にもかかわらず、スターリンの出身地という関係で、軍産複合体などの工業を強化した。それが完全に裏目に出た。 裏目に出た結果、いまは国民の8割が農業に従事している。世界的にみても農業化が急速に発展した珍しい事例となっている。そういう形で土地との結びつきが強いから、ディアスポラ(離散)がない。みんなで自給自足経済のような生活をして、結構うまくやっている。 グルジアで最高にユニークなのは言語だ。世界のほとんどの言語には主語と述語があり、それによって主格と対格が決まる。しかし、世界にはごく少数だけ、主格・対格構造をとらな