ほんのり淡い青柚子の色。つまめばふわりと広がるさわやかな香り。 口どけのよい和三盆糖の上品な甘み、しっとりした求肥の舌触り・・・・・・。 鶴屋吉信を代表する銘菓「柚餅」。その誕生には意外なきっかけがありました。 それは享和三年(一八〇三年)の創業から半世紀ほど経った、三代伊兵衛の時代のこと。 あるとき菓子づくりをしていた伊兵衛が材料の配合を間違えて、まったく違った菓子が出来てしまいました。 しかしその菓子に捨てがたい趣を覚え、青柚子を加えて和三盆糖をまぶしたところ、たいそう美味しかったのです。 伊兵衛はその菓子に「ゆうもち」と名付け、明治初年に店で商い始めました。 以来百五十年、代々伝えられてきた柚餅。桐箱に納めて大切な贈答に用いられ、 戦時中には、物資の乏しい時代にも京菓子の伝統を絶やさぬようにと京都府が定めた和生菓子特殊銘柄品十八品にも数えられています。 柚餅の包装を飾るのは、文人画家