山中 浩之 日経ビジネス副編集長 ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。 この著者の記事を見る
地政学が一般にそれほど知られていない最大の理由は、なんといってもドイツ地政学にある。 「ドイツ地政学」(ゲオポリティーク:geopolitik)は、地政学の知的伝統を20世紀後半に歴史の闇に葬り去る上で、大きな役割を果たした。 ドイツ地政学そのものは、19世紀後半のドイツに生まれた。そして、20世紀初頭にナチス・ドイツに活用され、その拡大主義や人種差別主義を支える理論的支柱の役割を果たした。それゆえ悪名高くなったドイツ地政学は最終的には第二次大戦の終了と共に終わった。 ここではその複雑さを踏まえながらも、歴史的に大きな役割を果たした2人の人物について、話を進めていきたい。 ドイツ地政学の祖:ラッツェル フリードリヒ・ラッツェル(1844~1904)は、「政治地理学」(political geography)の元祖として知られている学者。彼の主著のタイトルは、まさに『政治地理学』(1897)
マスキュリストとしての立場から、目指すべきはあくまでも男女平等の徹底であると私は考えている。レイシズム(人種差別)と同じベクトルでセクシズム(性差別)も消すということだ。女性の被抑圧と同時に男性の被抑圧もなくさなくてはならない。男性差別撤廃のゴールは、政治家の男女比、管理職の男女比、自殺者における男女の割合、片親家庭の父母の割合、離婚後に親権を取る父母の割合、これらがすべて等しく5:5になることだろう。 たぶん私の言っていることは、30代以上の人間には突拍子もなく思えるかもしれない。でも、10年後にはさらにリアルに感じるだろうし、実現できるはずだ。例えば徴兵制の男女平等は、今は突拍子もなく思えても、アファーマティブ・アクションで女性の大臣の数が全体の半分になり、管理職の半分が女性になった時、たぶんそうは思わないだろう。とりわけ、(男性に奴隷意識でもない限り)男女で決めた戦争なのに男性だけが
蛯谷敏 日経ビジネス記者 日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。 この著者の記事を見る
宅配便最大手のヤマト運輸は1月22日、同社のメール便サービス「クロネコメール便」を3月末で廃止すると発表した。国の独占事業である手紙などの「信書」がメール便に混在すると、利用者が刑事罰に科せられる懸念があることが、廃止の主たる理由だ。 国土交通省の調べによると、2013年度のクロネコメール便の取り扱い数はおよそ20億8400冊。このうち9割が、法人によるカタログやパンフレットの送付で、残る1割が個人の利用だ。この個人利用のうち、3~4割が書類の送付に使われており、ここに信書が紛れ込む懸念があるという。 4月以降、これまでメール便を利用していた法人顧客向けには新たに「クロネコDM便」を提供。メール便とほぼ同じサービスを展開する。残る1割の個人利用の中でも、小さな荷物のやり取りに使っていた人に向けては、新たな宅急便サービスを2つ投入する。 1つは、現在の宅急便60サイズよりも小さい専用ボックス
ちょっと、旬を過ぎた話題だが、中国漁船による小笠原の珊瑚密漁問題について考えたい。というのも先月半ば、福建省寧徳市霞浦県三沙鎮という、密漁漁船の拠点にふらりと訪れたからだ。 霞浦県三沙というのは中国で一番美しい干潟として、ナショナルジオグラフィックにも紹介された景勝地で、実は国内外の観光客はそれなりに多い。霞浦というだけあって、普段は霞がかかって見通しの悪い海だが、晴れあがると、きらめく海にノリ養殖のいかだが並ぶ複雑な海岸線は確かに絶景だ。 ちょうどAPEC首脳会議の場で開かれた短い日中首脳会談で、小笠原の珊瑚密漁問題に触れたこともあって、地元では、反珊瑚密漁摘発大キャンペーンが開かれ、あちこちに、珊瑚密漁に関するタレこみ奨励の張り紙や、珊瑚違法密漁を批判する垂れ幕を見かけることができた。三沙鎮出身のタクシー運転手が、私を日本人と知ってか知らずか、「先日、珊瑚密漁の船長が、釣魚島(尖閣諸島
10歳の女の子が「引上げ分は社会保障に!」 「動き出しています、社会保障!」 「子育て、医療、年金……消費税の引上げ分は社会保障に着実に使われています。」 「安心をずっと。元気をもっと。」 消費税増税引き上げの判断時期に合わせるかのように乱れ打ちを始めたこのCMに登場するのは若冠10歳の子役・芦田愛菜。10歳といえば、台形の面積の算出方法を覚えたくらいの年齢だが、その習得レベルの子に「引上げ分は社会保障に!」と訴えさせて、消費税増税の理解へと至らせようとする強引さに突っ込まざるを得ない。先月後半から大量投入されているこのCM、消費税10%に向けて「女・子供」を使う露骨なPR作戦だ。 ギャラリー風に紹介される「みんなの安心」 壁に掲げられた写真やパネルを、体の後ろで手を結ぶ「美術館鑑賞スタイル」で巡り、しきりに頷く芦田愛菜。我が子を囲んで微笑む夫婦の写真や、車いすの男性を押しながら笑みを浮か
米中間選挙は、上下両院選挙と州知事選挙のすべてで共和党が勝った。米国民は、オバマ大統領のリーダーシップに対するレファレンダム(国民投票)でレッドガードを突きつけたのだ。 今のオバマ大統領に、「Yes We Can」を合言葉に勝利し、ホワイトハウスに乗り込んだ当時の面影はもはやない。「しっかりとした自分の考えを持ち、決してぶれない。偉大なリーダーになる素質がある」と、ジェラルド・カーティス コロンビア大学教授に太鼓判を押された初の黒人大統領。そのオバマ大統領がなぜ米国民の信頼を失い、「第二次大戦以後、最低の大統領」(クイニピアック大学世論調査)と呼ばれるようになってしまったのか――。 中間選挙を終えて、米言論界にはさまざまな見方が広がっている。異口同音に言われているのは、オバマ大統領のリーダーシップの欠如だ。リーダーシップは危機に直面した時に、判断力と決断力のかたちで発揮される。日ごろ、いく
あなたはソファーで寝転びながら、スマホを使ってお菓子を注文する。当日配送といっても、早くても夕方くらいか。そう思っていると突然ドアベルが鳴る。「宅配便です」と訪問者は言う。「なぜこんなに早く配送できたんだ?」と聞くと、彼は「そろそろ注文なさると思いましてね」と答える。 あなたがスマホを眺めていると、ある作家の記事が炎上していた。この作家は暴言が多そうだ。過去の記事を読むと、スルーされてきた数々の暴言がある。この作家の本を読めばネタになるだろう。あなたはさっそく書籍を注文する。すると、またしてもドアベルが鳴る。書籍の配達だった。「なぜ、こんな早く?」。配達人は「そろそろこの作家が気になるんじゃないかと思いましてね」と答える。 クリスマスイブの夜、あなたは彼女と良い雰囲気になる。ちょっと酔わせてみたくなったあなただが、安酒しか持っていない。あなたは、スマホから高級なシャンパンを注文する。すると
平成24年度(2012年度)からの新学習指導要領により、現在の中学校ではプログラミングが必修項目に入っていることをご存じだろうか。 現代社会において、ITはなくてはならない必須のツールとなっているが、それを裏で支えているIT技術者については人手不足の状態が続いている。その流れを受け、教育の現場でもプログラミングが必修化された形である。 経済産業省が発表した「情報サービス産業の現状」によると、ウェブビジネス市場は2011年の11兆円から20年の47兆円まで、約4.5倍に拡大すると予測されており、今後さらなる人材不足に陥ることは必至である。 2014年9月18日の日経新聞でも「IT分野の派遣『月収100万円』でも集まらず」というような記事(会員限定)も出ており、すでにIT業界における人材不足は深刻な事態となりつつある。 今回のコラムでは、今後ITの重要度が増す中、日本の未来を左右するであろう子
7月17日にオランダからマレーシアに向かっていたマレーシア航空17便(MH17)がウクライナ・ドネツク州グラボヴォ付近に墜落した。7月24日現時点では、親ロシア派の「ドネツク人民共和国」が発射したロシア製地対空ミサイル「ブーク」が同機を撃墜した可能性が濃厚だ。 この事件の被害者へ哀悼の意を表すことと、事件解明を切に願うことは当然として、当コラムでは宇宙関連という面から見てみたい。 米政府高官の“意図的な”リーク まず興味深いのは、米航空宇宙専門誌のAviation Week誌が事件発生直後に米高官の発言として「MH17はミサイルにより撃墜された」と伝えたことだ。 同誌は高官が「アメリカはミサイル発射を検知するシステムを持っている」と発言したとしている。これは明らかに、アメリカが保有する早期警戒衛星システム「DSP(Defense Support Program)」と、現在構築中の次世代早期
4月、インターネット通販最大手のアマゾンジャパンが酒類の直接販売を始めた。販売ページには、「アサヒスーパードライ」、「キリン一番搾り」、「サントリープレミアムモルツ」など、大手ビールメーカー各社の看板商品のほかに、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワインなど様々な酒が並ぶ。 銘柄が非常に多様でかつ、持ち運ぶには重い酒類は、ネット通販が比較的強みを発揮しやすい分野とされる。小売り店舗に比べて郊外の倉庫で豊富な品揃えができ、配送を希望する購入者も多いからだ。ネット通販で圧倒的な存在感を持つアマゾンの直販は、少なからず業界関係者に衝撃を与えた。 「アマゾンは免許をどうしたのか」 だがそのニュースが駆け巡ったのと同時に、酒類販売の業界関係者には1つの疑問も浮かんだ。それは、「アマゾンは免許をどうしたのか」というものだ。 日本国内で酒類を販売するためには、免許が必要なことは多くの方がご存じかと思う。 もう少
どうやって成長事業を見定め、衰退事業から経営資源を移していくか。これは日本企業にとっても大きなテーマだろう。 そのケーススタディーとなる企業の1つが、世界的な大手化学メーカーとして知られる米デュポンだ。身近な商品に使われる同社の技術としては、女性用ストッキングなどの素材であるナイロンや、鍋やフライパンを焦げ付きにくくするテフロンがよく知られる。 「日経ビジネス」6月2日号では、そのデュポンを特集した。 今年で創業212年となる同社は、安全に対するこだわりの強い会社としても知られる。今回はデュポンの安全への徹底ぶりを示すエピソードとその背景を紹介する。 「急がなくていいから、手すりをつかんで」 日経ビジネス6月2日号特集「デュポン 200年企業が見る未来」の取材で、同社の拠点を訪れた際、待ち構えていた取材相手にかけられた第一声がこれだった。場所は駐車場から建物の玄関に上がるほんの数段しかない
特設の舞台で、カウントダウンと共に白いヴェールが落ちる。それは新車の発表会のように派手だった。 5月29日、米スペースX社は、カリフォルニア州ホーソンの本社で、新型有人宇宙船「ドラゴン・バージョン2(V2)」を公開した。同社は現在、米航空宇宙局(NASA)との契約で、国際宇宙ステーション(ISS)へドラゴン無人貨物輸送船を打ち上げている。ドラゴンV2は、ドラゴンを有人型に発展させたもので、7人の宇宙飛行士を乗せてISSと往復する能力を持つ。NASAの有人宇宙船開発補助金プログラム「C3PO」の資金を使い、米シエラネバダ・コーポレーション(SNC)の「ドリームチェイサー」(民間有人宇宙船、ドリームチェイサーが一番乗りか参照)、米ボーイング社の「CST-100」と共に開発中の有人宇宙船である。 同社のイーロン・マスクCEOは、ドラゴンV2の技術的概要を説明した上で、「ドラゴンV2は、宇宙へのア
今年に入って4月まで、日経平均株価が4か月連続下落するなど日本株の低迷が続いています。その理由はアベノミクスにあるとの批判が市場では強まっています。 しかし、この批判は的を射たものと言えません。むしろ、ここまでのアベノミクスの進捗は想定を上回るもので、評価されてしかるべきと考えています。今回はアベノミクス批判に反論をします。 アベノミクスに対する批判として多いのは次の3つです。 追加緩和がない。 成長戦略の進展が遅い。 もっと経済政策に専念すべき。 今回はこの中で株安の理由として批判されることが最も多い「追加緩和がない」を取り上げます。 異次元緩和は称賛されたが。。。 昨年4月4日の政策決定会合で、物価安定目標(前年比2%程度の消費者物価の上昇)を達成するために、日本銀行は大規模な国債購入を柱とした「量的・質的緩和」(いわゆる異次元緩和)を決定しました。 日本株はこれを好感して大幅高、証券
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