(これは『音楽と人』2020年8月号に掲載された記事です) うちには1枚のお皿がある。「私が好きなインテリアショップのものなんですけど、良かったら使ってください」と、結婚祝いにいただいたものである。大きくて真っ白なお皿は、緩やかなカーブに上品な金色の縁取りがされており、私が作る大雑把な一品でも、そこに盛り付けるだけでちゃんと料理したような気にさせてくれる。包容力のあるこのお皿に頼って、それまで以上にいろんなメニューを作るようになった。私はいつも、その贈り主の涼やかな声を思う。身体から声を発するだけで内側から浄化されるような、聴くほうもその声を浴びるだけで清らかになれるような、そんな声で唄えたら、どんなに気持ちがいいだろうかと憧れる。しかし、その瞬間にこうも思う。その声という与えられたものをずっと大切にして誰かのために唄い続けられるようなエネルギーとモチベーションと、豊かな人間性を併せ持つの