冷たく無機質なコンクリートの巨大な壁が海岸線に沿ってどこまでもまっすぐに屹立している。数十年に1度、あるいは数百年に1度という頻度で荒れ狂う海と闘うために、そこに海があることさえ頑なに拒絶しようとしているかのようだ。さしずめ現代版「万里の長城」といったところだろうか。人は技術によって自然を屈服させることができるのだ、と天に向かって叫んでいるようで、そら恐ろしくなる風景である。 東日本大震災の巨大津波が襲った東北地方沿岸で、いま、粛々と「巨大堤防」の建設が進んでいる。やっとの思いで復興を遂げた「ゆりあげ港朝市」(宮城県名取市閖上)の取材に行った際、朝市で偶然出会った建築家はこう言った。 「堤防見ましたか。涙が出ますよ。あんなものをどんどん造ってしまって、いいんでしょうか」 建築家の案内で現場を見に行くことにした。巨大堤防の計画については、以前このコラムでも取り上げたことがあったからだ。 地元