日本の年金財政は極めて深刻な問題を抱えている。にもかかわらず「100年安心」がうたわれた2004年の年金改正以降、そうした問題は糊塗(こと)され続けている。 厚生労働省は5年に1度、人口動態と経済変数に一定の前提を置き、年金財政の今後100年間の姿を描き出す。これは財政検証といい、いわば年金財政の定期健診だ。直近は14年に実施され、健康体であるとの判断が下された。 ただしその判断は物価上昇率1.2%、賃金上昇率2.5%など実態とかい離した日本経済の先行きに関する前提を置くことで、年金給付を抑制する「マクロ経済スライド」が順調に機能するという仮定の上に成り立っている。 ◆◆◆ マクロ経済スライドは、高齢化の進行下でも年金財政の持続可能性を図るため、04年改正で導入された。 もともと年金は前年の賃金上昇率に応じ、年金額を改定する仕組みをとってきた。例えば前年の賃金が2%上がれば、年金も2%上げ