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ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (8)

  • 社会保障の「気前良さ」は政府支出の大きさでは測れない - 社会学者の研究メモ

    政府は増大する社会保障支出を背景に、いよいよ増税に向けた調整を格化させている。他方でアカデミズムにおける社会保障論(福祉国家論)をみると、日は基的に社会保障に関して低い水準にあるということがたいていの議論の出発点となっており、現在の政府の政策展開とアカデミズムのあいだには奇妙なズレがあることが分かる。 このズレはいかにして生じているのだろうか? ある国の社会保障の手厚さを測る指標としてしばしば社会保障支出のGDP比が用いられる。また、日政府はしばしば国民負担率という指標を用いる。しかし、たとえば年金支出は高齢化率にしたがって上昇するので、「年金支出の規模が大きいから社会保障が充実している」ということにはならない。失業率と失業手当の関係も同じで、失業率が高ければ失業手当支出も増えるが、かといって雇用関連支出が「充実している」というわけではない。 図は2007年のOECD諸国の社会支出

    社会保障の「気前良さ」は政府支出の大きさでは測れない - 社会学者の研究メモ
  • 社会学における「理論の実証」 - 社会学者の研究メモ

    (以下は二〜三カ月前に書いたメモですが、寝かせておいてもあまり意味がなさそうだし、稲葉先生もシノドスの論考を公開されたのでいいタイミングだと思うのもあり、ちょっと手を入れた上で公開します。) 社会学の問いの特徴 私は、学部のゼミでは(大学院でも基的にはそうだが)、いわゆる「標準的な研究プロセス」に従って個人研究をするように指導している。標準的な研究プロセスとは、問いを立て、それに対する理論仮説をデータ(質的・量的)で検証するという手続である。 その際、しばしば「社会学的な問いの立て方」というものを説明する必要が出てくることがある。学生は基的に社会学の授業をいくつか受けているので、そうしたほうが効率がよいからである。それに、意外に「社会学的な問いの立て方」を説明するのは簡単なのだ。 それは、「注目する現象/人間行動が、性別、年齢、学歴で違いを持つかどうかをまず考えてみたら?」というもので

    社会学における「理論の実証」 - 社会学者の研究メモ
  • 「幼稚園と学力の関係」における相関関係と因果関係 - 社会学者の研究メモ

    統計データの解釈について、しばしば指摘される注意事項が「相関関係と因果関係を混同するな」というものである。今回はこの警句について、「幼稚園出身の子の正答率、高い傾向 全国学力調査」(asahi.com)という記事を題材にして少々詳しく説明してみよう。記事では、全国学力調査での小6時点の算数の得点と中3時点の国語の得点は、いずれも「幼稚園>保育園>どちらも通っていない」の順に高かった。 朝日のこの記事では、この関係について三つのコメントを掲載している。 全国国公立幼稚園長会の池田多津美会長は「幼稚園は、充実した遊具や広い運動場で体験を通して主体的な学びを積み重ねている。勉強が難しくなる6年生ごろから学習意欲で差が出るのでは」と言う。 この推測は、幼稚園への通園経験自体に学力を伸ばす要因があるのでは、というもの。 次。 一方、保育所施設長でもある全国保育協議会の小川益丸会長は「保育所の教育が幼

    「幼稚園と学力の関係」における相関関係と因果関係 - 社会学者の研究メモ
  • 各種ジェンダー関連指標のまとめ - 社会学者の研究メモ

    (文献紹介は一回スキップします。) 国際マイクロデータの普及に伴い、徐々に国別のジェンダー平等を測るための総合指標(composite index)が利用される機会も増えているように思います。総合指標はその算出方法を考慮しないと十分に生かせないところもあります。ここで簡単にまとめておきますので、よろしければご参照下さい。 以下で解説するのはHDI、GDI、GEM、ついでにGGGIです。最初の三つは国連開発計画(UNDP, United Nations Development Programme)が毎年発行する『人間開発報告書(Human Development Report)』で発表されます。 HDI (Human Development Index) HDI(人間開発指数)はジェンダー関連指標ではありませんが、GDIの算出方法のもとになる指標なので、説明しておきます。これは国ごとの生活全

    各種ジェンダー関連指標のまとめ - 社会学者の研究メモ
  • 少子化問題の整理 - 社会学者の研究メモ

    社会学ちょっと前に野田聖子議員が少子化問題についてぶっちゃけてました。自民党少子化を加速させた:自民党・野田聖子衆院議員インタビュー(日経ビジネス、2010.2.15)内容をまとめつつ、コメントをつけてみます。最初に言っておきますが、正確な知識は各自に文献をあたるなどしてください(検索すればいくらでも出てくる)。ここでは粗めの情報のみです。あと、「子どもが増えてだからどうなんの」という(controversialな)話もしてません。一言だけいっておくと、「日だけ他の先進国と違って少子化を放置する」というのは、社会主義ほどではないにせよ壮大な社会実験の域になりますから、ちょっとスリリングすぎるような気もします。(いや、今でも十分実験状態なんだけど。)問題の整理...とその前に、頭の整理をしておきましょう。いま極端な少子化で深刻に悩んでいる主な先進国はというと。まず、日もびっくりなペース

  • 同棲率と出生率 - 社会学者の研究メモ

    社会学(先日のエントリのフォローは後回しです。ごめんなさい。)今日は日ではクリスマス・イブですね〜。日ではクリスマスはカップルのためのイベントになっちゃっていますが、こちらではクリスマスは家族(特に子ども)のためのイベントです。なのでうわついた雰囲気はありません。家族と一緒に静かに過ごす人が大半。だから街も静か。さて。恋人といえば同棲(多少強引に)。出生率に関心のある家族社会学者、人口学者のあいだで前々から話題になっているのが、同棲出生率との強い関係です。実際どれくらい関係があるのか見てみましょう。(同棲率はOECDFamily database、TFRはWorld Bank WDIより。同棲率は2001〜2007年、TFRは2002年のものを抽出。今回のデータにはなぜかスウェーデンが入っていません。残念。)やっぱり、見事に相関していますね。ちょっと外れているのがアメリカとアイルラン

    tikani_nemuru_M
    tikani_nemuru_M 2009/12/25
    同棲率と出生率の明白な相関関係/「50代あたりのヲジサンたちを、フランスに連れて行って1ヶ月ほど見学させたらどうかしら」女買って遊んでくるだけではなかろか?/とりあえず、非嫡子差別やめようぜ。
  • リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学 - 社会学者の研究メモ

    先日ディスカッサントとして招かれた社会学史学会で、コミュニタリアニズムについて話をする機会があった。おさらいがてら読んでみたのが、菊池『日を甦らせる政治思想:現代コミュニタリアニズム入門 』だったのだが...。私も、著者自身が「日ではコミュニタリアニズムは誤解されている」と述べるとおりであると思うのだが、そうであればなお、批判者を説得できる書き方をした方がよかったのでは、と思う。私自身はどちらかといえばリベラリズムに共感しているが、残念なことにこのによってはあまり説得されなかった。自分が主張したい議論について書くのなら、その議論に真っ向から反対する論者を説得するつもりで行うのが理想である。たとえば市場原理を批判したいのなら、相手はミクロ経済学者である。 日を甦らせる政治思想~現代コミュニタリアニズム入門 (講談社現代新書) 作者: 菊池理夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 200

    リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学 - 社会学者の研究メモ
  • ソーシャル・キャピタル論の考察(その一) - 社会学者の研究メモ

    ソーシャル・キャピタルの定義は人によって違うし、定義している人がじゃあ道理の通った整理をしているのかというと意外にそうじゃないので、ソーシャル・キャピタルという概念を有効に活用するにはどうしたらいいのかを考察してみよう。 まずP.ブルデューの定義。 Social capital is the aggregate of the actual or potential resources which are linked to possession of a durable network of more or less institutionalized relationships of mutual acquaintance and recognition --- or in other words, to membership in a group --- which provides

    ソーシャル・キャピタル論の考察(その一) - 社会学者の研究メモ
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