アーチ建築技術の基礎をなすレンガは、土を素材とする。 土は、地上のどこにでもある。 だから、植民都市のいかなる場所でもローマを実装できた。 ローマが大帝国となった理由を、政治や軍事に求める人は多いが、「ローマとはレンガの帝国である」という着眼に、頭ガツンとやられた。 植民都市に送り込まれたエンジニアが、そこの土を素材とし、レンガを作り、レンガを積み上げ神殿を建て、都市をつくった。道路が舗装され、水道が引かれ、インフラが整備された。紀元後には、石灰由来のセメントと切石を骨材としたコンクリートが発明され、文字通りローマ帝国の礎となった。 歴史を振り返るとき、一般に、国家や王朝の盛衰や、社会や文化の変遷を思い浮かべる。 しかし、そうしたフレームを捨て、「建築」という視点で見直すとどうなるか? これを成し遂げたのが本書になる。「建築の歴史は人類の歴史である」という立場のもと、15の講義+15の補講