日本においては、2020年から2021年にかけて斎藤幸平の『人新世の「資本論」』が30万部以上を売り上げるベストセラーとなった。この本の第2章はグリーンニューディールへの批判に費やされている。そのため、日本における気候危機への関心が高い読者層には、グリーンニューディールに対して否定的・批判的な立場をとっている方も案外多いのではないかと予想する。 しかし、斎藤のグリーンニューディール批判は文献の引用の仕方がしばしば不正確であり、また批判対象であるグリーンニューディール政策の要約にも不正確な部分が多く、特にグリーンニューディールやこれに関連する諸問題について予備知識がない読者には大きな誤解を与えてしまう恐れがある議論となっている。ここでは不正確な箇所の指摘と修正を網羅的に行うことは、時間の都合上できない。代わりに、このグリーンニューディール批判の問題を示す一つの例として、『人新世の「資本論」』