「いずれ仕事がなくなってしまうのか?」。いま私たちがAIに感じているのと同じ恐怖を、機械に対して抱いた人たちもいた。産業革命が起きた時代、英国の詩人バイロン卿もその1人だったが、その娘エイダ・ラブレスこそ、今日「コンピュータの母」といわれる伝説の女性である。”文系“である詩人の父と、数学好きな”理系“の母のもとに生まれた「コンピュータの女神エイダ」とはどんな人物なのだろう? ウォルター・アイザックソン著『イノベーターズⅠ』『イノベーターズⅡ』を基に再構成してお届けする。 10代で駆け落ちした数学少女 エイダの詩才と不柔順な性格は父バイロン譲りだが、機械に対する愛は違う。それどころか、父親は機械を敵視する「ラッダイト」だった。母アナベラは、娘を父親のようにしてはならないと考え、厳しい数学教育を施した。まるで、数学が詩的想像力に対する解毒剤になるとでもいうかのように。だが、母の苦労にもかかわら