「おすそ分け」 冷蔵庫を開けると、生の片腕がいやでも目につく。 「やれやれ、困ったな」 だれに聞かせるわけでもないが、思わずグチがもれてしまう。 隣りの山本さんちの義男くんの腕だ。高校生で青春まっさかりだから、腕の抜けかえも早いし、しょっちゅうあるらしい。そのたんびにおすそ分けといって、うちに持ってこられるのはありがたいのだが、ちょっと閉口する。 大家族だったらまだしも、主人と子ども二人の四人暮らしでは、片腕一本はなかなか食べ切れるものではない。さばくのだって、昔なら一家の家長である男の仕事だったが、核家族の今は主婦の仕事になってしまっている。 もっとも山本さんちも事情はおなじだ。そのうえあそこは三人家族だから、両腕となると、どうしてもおすそ分けしなければならないだろう。 このあいだも新聞の投稿欄に片腕問題が出ていた。七十過ぎのおばあさんの投書で、最近の若い主婦はせっかくおすそ分けした孫の