自分にとって抑圧的な環境、不都合な状況なはずなのに、なぜかそこに適応してしまう。こうした態度を「自発的隷従」と呼ぶことがある。こうした自発的隷従のような態度について、社会心理学の見地から分析した、ジョン・ジョスト『システム正当化理論』(ちとせプレス)が刊行された。訳者の一人である東洋大学教授の北村英哉氏がその読みどころを解説する。 なぜ政権党は勝ち続けるのか?まさに今の時代に合っている。ジョン・ジョストが提唱する「システム正当化理論」、そんな風に考えた。この理論は、「なぜだか現状維持に走ってしまう人々」の生の現実的な姿をつかむことに長けている。 システム正当化理論は、社会心理学の理論である。これまでの社会心理学の理論では、多くの場合、人々は自分自身が属する内集団を好み、自集団の有利を期待し、その利得に合致する方向で行動するものだとされていた。しかし、システム正当化理論は、こうした従来の理論
