第157回芥川賞の受賞作品に、盛岡市在住の沼田真佑さん(38)の「影裏(えいり)」が選ばれたことを受け、県内の関係者からは喜びの声が上がった。岩手県ゆかりの作家で、純文学が対象の同賞受賞者は初めて。 直木賞作家の高橋克彦氏によると、同県出身者で芥川賞と同時に発表される大衆小説対象の直木賞を受賞した作家は過去、高橋氏を含め5人。 一方、芥川賞候補になった作家は7人いたものの、いずれも涙をのんでいるだけに、高橋氏は沼田さんの受賞を「快挙」と喜んでいる。 高橋氏は、芥川賞作家が出なかった背景を「岩手には虐げられてきた歴史があり、現実の厳しさよりロマンやファンタジーを書く作家が多いから」と推察。沼田さんについては「岩手生まれではないから、盛岡に移り住んで岩手の風土や優しさに気付き、作品に表現できたのではないか」と語った。 影裏では、主人公が渓流釣りに行く同市内の川や林の様子が鮮やかに描かれている。