2011年07月27日11:47 カテゴリ本テクニカル ゲーム理論による社会科学の統合 きのうの記事で紹介した規範やフレーミングを理論的にどう説明するかという問題は、経済学のフロンティアである。一つの方向は、プロスペクト理論や事例ベース理論のような新しい意思決定理論として定式化するもので、これはGilboaに解説されている。もう一つはTirole-Benabouのように規範を合理的に説明するもので、本書もその一つといえよう。内容は原著について紹介したので、ここではその問題点を指摘しておく。 本書は規範をゲーム理論で説明し、これをすべての社会科学の基礎にしようという野心的な試みだ。従来のゲーム理論では、規範をナッシュ均衡として説明するが、著者はそれは無理だという。ナッシュ均衡は、すべてのプレイヤーの利得関数についての共有知識を全員がもつことが条件なので、多人数の社会では成り立たない。また複数