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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/kananaka (3)

  • 沈黙の木箱 ―― 二歳のバースデーによせて。 - kananaka日和

    ヒカルちゃん*1にバースデーカード送ったよ、と彼女は笑う。エヘヘと照れたようにほころぶ口元が、目に浮かぶ文字列。今度子供たちも交えてスカイプしよう、うちの子は日語あまり話せないけど。―――だったらヒカルも同じ、と私もすかさず打ち返す。 そうして、ひとしきり互いの近況や育児ネタに興じた後、まるで世間話のようにさりげなく、彼女は「今だから言える話」を切り出した。「あたし、子どもの頃いつも寂しかったんだよねー」と。 想定外だったのは、結婚しても子どもが出来ても、寂しさから卒業できなかったこと。あたしには父がいない。もちろん、一つ屋根の下で暮した生物学的父はいる。育児にも割と協力的な人だったし、子どもに経済的な不自由はさせない人だった。だけどやっぱり、あたしに父はない。 いじめられて「学校に行きたくない」と言ったとき、彼は学校を休ませてはくれたけど、理由を聞こうともしなかった。助けてくれなかった

    沈黙の木箱 ―― 二歳のバースデーによせて。 - kananaka日和
    tsugo-tsugo
    tsugo-tsugo 2013/03/11
    雪国独特の発色、コントラストがすごい綺麗。実際に住んでみるとしんどいこともあるけども。子どもは1年で劇的に成長するので、えっもう2歳なの感がすごい。
  • 再発――Répétition de maladie, "FEMME" - kananaka日和

    予兆はあった。下肢へと続くなだらかな起伏、その内で穏やかに蠕動し息づく彼女が、ある日を境に静かな変質を始める。柔軟性を失い年季の入った漬物石のように重たく冷やかに縮かむと、それは少しずつ裂けては痙攣し、やがて雲母(マイカ)のように剥がれ、落ちてゆく。 油断していた。二週間ほど続いていた体調不良、抑に倦怠感、不眠、皮下を線虫が這いずる感覚、レストレスレッグズ*1、その他下半身のみならず全身を襲う各種不快な症状に、心当りはあった*2。にもかかわらず「いやいやまだまだ」の思いが抜けなかったのは何故だろう。 ほんのり汗ばむまぁるいヒカル*3の頭をワシワシしつつ、それらがすべて杞憂であれ、と呪文をかけていたのかもしれない。これまでなんとか完母*4でやり繰りしてきた。確かに手元の育児を開くと、「母乳育児のママにもそろそろ…」の記述が見いだせる。それでも出産から一年や一年半、未だ女の痛みが再開してい

    再発――Répétition de maladie, "FEMME" - kananaka日和
  • それから光がきた。 - kananaka日和

    2010年12月9日14時33分。 くはっと声にならない声をあげ、カノジョはこのセカイで最初の光を見た。まだ像を結ばぬ瞳を全身の感覚器官で補って、確かに感じとっていた。このセカイの眩(まばゆ)さを、このセカイを充たす音の海を、このセカイに吹く乾いた風を、このセカイに蠢くものの気配を、そしてハハの胎内にいた時に想像もしなかったセカイが、ここに在ることを。 カノジョはもう一度、かはっと小さく咽せ、そうして小さく声をあげてみた。心許ない少しかすれた声で、初めて使う器官の感触を確かめるように。 ワタシはそれを遠くで聞いた。術中の失血量が影響し、血圧が降下し意識が朦朧としていた*1。無影燈の光の中をレーザーメスの白煙と肉を焦がす臭いが立ち、悪心と呼吸困難の中、吾子は苦しくはないかと案じつつも、水底に引き込まれるようにまぶたは重かった。 「そのまま寝ちゃっててもいいよ〜」 若い執刀医*2が、ベテラン看

    それから光がきた。 - kananaka日和
    tsugo-tsugo
    tsugo-tsugo 2011/01/30
    おめでとうございます ひかりあふれる写真がすてきです。
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