私たちは,科学的,哲学的,あるいは,宗教的などなど,なんらかの「ものの見方」にしたがってものごとを見る。現象学とは,こういうなんらかの見方でものを見る以前に,私たちの意識はそのものをどう経験しているかを分析しようとする哲学である。ドイツの哲学者エドムント・フッサール(Edmund Husserl, 1859-1938)が提唱し,現代哲学に大きな影響をあたえている。 たとえば,かれはこの著作で次のように論じている。ガリレオの落体の法則によると,重さがちがう物体も同じ速度で落下する。ニュートンの慣性の法則によると,運動している物体は外部から力が加わらないと,同じ運動を続ける。現実の世界では,気圧や摩擦の影響で鉄は紙よりも速く落下するし,氷上で物体を滑らしてもいずれ停止する。自然科学の大きな成果を目にすると,私たちが現に住んでいる世界は雑音や不純物に満たされていて,自然科学の法則がそのままなりた