上智大学神学研究科がわれわれ編集組読相派にもたらしてくれたものは少なくないけれど、当時はまだ若かったフランシスコ会の司祭であった小高毅さんによるオリゲネスの本邦初訳は、とりわけ快挙というにふさわしい。 実は困っていた。オリゲネスはヨーロッパ思想史のどんな書物の劈頭にもその名が出てくる教父であるのに、どうもその実像がわからない。「全ヨーロッパの思想はプラトンとオリゲネスの注解にすぎない」、あるいは「ヨーロッパ2000年の哲学史はプラトンの註にすぎないが、ヨーロッパ2000年の思想はすべてオリゲネスが用意した」などと、ヨーロッパ思想史のどんな本の冒頭にも書かれているにもかかわらず、プラトンはともかくオリゲネスについては、日本ではキリスト教の研究者をのぞくと、あまりに語られてこなかったのだ。 たとえば、オリゲネスの次にはプロティノスがヨーロッパ思想史の主要舞台に登場するのだが、日本ではプラトンか