■永遠なる神の子 永遠なる神の子、チンギス・ハーンの子孫はこう呼ばれた。ユーラシア大陸をまたぐ広大な支配地、無敵の騎馬軍団が彼らに永遠の支配を約束したかのようにみえた。だが、彼らは神の子ではなかった。 1241年、モンゴル帝国の第2代オゴタイ・ハーンは、遊牧民によく見られる深酒がもとで急逝する。後継者は指名されておらず、モンゴルの主力軍は遠くヨーロッパにいた。訃報を聞いたモンゴル軍はハンガリーの包囲を解いて、あわただしく帰国の途についた。こうして、ヨーロッパは再び破滅から救われたのである。 モンゴル帝国の創始者チンギス・ハーンが死んだ時、帝国がゆらぐことはなかった。オゴタイ・ハーンを中心に、ジュチ家、チャガタイ家、オゴタイ家、トゥルイ家が結束したからである。ところが、3代目になると、創始者の記憶は薄れ、外敵の脅威もなく、チンギス・ハーンの子孫たちは内を見るようになっていた。永遠なる神の子が