作家の高村薫さん。社会のさまざまな問題を、鋭い視点で見すえ、分析する。そのうえで書かれた硬派な小説に、私は魅せられ続けています。あまり小説を読まない私であっても、「高村さんは、次に何を書くのだろう」と本が出るたびに期待しているんですよね。 じつは、前の出版社にいるとき、畏れ多くも私は高村さんに時評の執筆をお願いしたことがあります。何の面識もない零細出版社が著名な作家さんに、いきなりそんなことをお願いしても、うまくいくわけがありません。たいへんていねいな、お断りの手紙をいただいたのを覚えています。 その高村さんが、「AERA」(朝日新聞社)で「平成雑記帳」という連載をやっています。勝手ながら、高村さんの筆を小説だけで使うのはもったいない、と思っていました。ですから、この時事評論の連載は、毎回とても楽しみにしています。 といっても、「AERA」本紙自体への興味を、私はすでに失っています。なんだ