最近、源氏物語を読み進めている。大雑把な話の筋を書いた本は以前から読んでいて概略だけは殆ど知っていたが、頭からきちんと読むのは恥ずかしながら初めて。源氏物語と言えば、日本の誇る文学の雄だ。古代世界最高の長編小説とも、世界最古の長編小説とも呼ばれており、後世の作品に与えた影響も大きく、海外からの評価も高い。日本思想としてみても、当時の日本人(といっても貴人)の美意識や心情をよく表現しているため、資料的価値は高い。日本の教養人を名乗るのであれば、やはり読んでおくのは必須だろう。そう思って手に取った。 さて、日本人特有の美意識として、「物の憐れ(もののあわれ)」という表現がよく使われる。桜の散り際を美しいと感じる心が、例として分かりやすいだろうか。儚げなもの、おぼろげなもの、今にも手折れてしまいそうなもの。常ではいられないもの。変わり行き過ぎ去ろうとするもの。見え隠れしてはっきりしないもの。そう