小股が切れ上がる…芸者の場合 吉行淳之介の小説『技巧的生活』(新潮文庫)を読んでいたら、銀座の高級クラブの客油木が店のホステスたちに「小股が切れ上がる」という言葉の意味を教えている場面が載っていた。これはなかなかうがった意見で、感心させられた。油木は、「教えておいてあげよう。女が初めて芸者に出るとするな。せいぜい芸者らしく歩こうとして、歩くときには内輪に足を踏み出し、大股にならぬように歩く。そういうときには、やはり、わざとらしさがつき纏う。芸者としての修行が積んでくると、歩き方を意識しないでも、自然に足がうまい具合に出て、女らしくそのくせ垢抜けしたきりりとした感じに歩けるようになる。それを、小股が切れ上がる、と言うわけだ。つまり、切れ上がるとは、卒業するというような意味だな」と説明する。この解釈は初めて聞いた。これは吉行淳之介の創作だろうか。それとも、かなり「小股が切れ上がる」という言葉の