田園風景の広がる中、JR岩舟駅へと差しかかる両毛線の電車。背後の荒涼とした岩船山が独特の雰囲気を醸し出す(12日、岩舟町で) 東京の小学校で出会い、お互いひかれ合っていた貴樹と明里。だが明里は中学校進学と同時に栃木県岩舟町に引っ越し、離ればなれになってしまう。1年後、今度は鹿児島県に引っ越すことになった貴樹が、明里に会うため岩舟駅を目指す。待ち合わせは午後7時。ところが折からの大雪に見舞われる――。新海誠監督の3部構成の連作短編アニメ映画「秒速5センチメートル」の第1話「桜花抄」はこんな筋立てだ。 このアニメのノベライズ(小説化)を手がけた作家の加納新太さん(38)は、岩舟駅の背後にそびえる岩船山を、「大きな赤っぽい肌の岩山」「平地のまんなかに、突然切りたった岩山があらわれるから、とても大きく感じる」と作中で記した。ロケハンに訪れたのは2008年2月。「朝起きたらちょうど原作と同じく雪が降