「田中角栄」という引力 田中角栄の没後から四半世紀が経とうとする今、生前の功績や人柄を称える書籍の出版が相次ぐ。マスコミ各社は「ナマの角栄」を見ていない若い世代をも巻き込む「ブーム」として色めき立ち、新証言や新資料の発掘を競い合っている。 元秘書の朝賀昭さんによれば、昨年末時点で通算130冊を数えた「角栄本」は9月までに170冊を超えた。今年春に石原慎太郎氏の小説『天才』がブレイクしてから、1年も経たぬうちに40冊も刊行されたということだ。私は仕事柄、その多くを手に取っているが、大体は「田中角栄はスゴイ」ということが描かれてある。 かくいう私もここ2年間、生前の素顔を知る「生き残り」を断続的に訪ね、20人以上の貴重な証言をメモ帳に書き溜めている。古希を超えた彼ら彼女らが語る田中全盛期とは、自身の黄金時代でもある。当然、オーラルヒストリーはどれも眩しかった。 一方、その凄まじい引力を前にする