ブックマーク / magazine-k.jp (37)

  • 本を発見するための「出版ハッカソン」

    5月29日〜6月1日にニューヨークで米国書籍産業最大のコンベンション、「ブック・エキスポ・アメリカ(BEA)」が開かれ、国内外から出版関係者が大勢集った。規模は毎年縮小し、地味になっていく印象があるが、一方でこれからEブックの時代に対応すべく、出版業界の礎となっていくであろうIT起業家を育てていく新しい試みも行われている。 初の「出版ハッカソン(Publishing Hackathon)」もその一つだ。ハッカソンとは、物事をやりやすくする「ハッキング」と「マラソン」をかけた造語で、かけ声の下に集まった有志のプログラマーエンジニアたちに、既存の業界がスポンサーとなって、起業をめざしてその場でサービスを実際に立ち上げてもらおう、という実験だ。 元々ニューヨークという街はウォールストリートに象徴されるように金融界の中心地で、住宅ローンのバブルがはじけた2008年のリーマン・ショックまでは、株ト

  • 東北を遥か離れて:電子化事業への5つの疑問

    posted by 鎌田博樹(EBook2.0 Forum) 大震災から1周年。東北に少なからず縁のある者として、その復興には強い関心がある。そして出版のデジタル化にはこの3年ほど、それなりに取り組んできた。しかしこの2つを結びつけた今回の「緊急」事業には、残念ながら筆者の理解と想像力を超えたところがある。オープンに議論が交わされた形跡を発見できないのも気になる。どなたか、以下の疑問を氷解させ、愚問であったことを教えていただけることを期待したい。 第1の疑問:東北復興の「緊急」事業なのか 東北復興予算の趣旨は、地域圏の産業・社会基盤を再建することで、産業・社会・文化活動の自律性、持続性の回復を支援することであると理解される。それと書籍の電子化とがどう関係するのだろうか。雇用創出というのならば、どのような技術を使い、どのくらいの雇用を、どこで創出するかが問題だ。東北の出版社、印刷会社、書店、

  • 電子書籍の「探しにくさ」について

    紙版が100万部を突破、12のストアでほぼ同時発売された電子書籍版も空前の売り上げを記録した『スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ』(講談社)。同書は内容のすばらしさもさることながら、「紙でも、電子でも」買える環境を新刊刊行と同時に広範に提供した初の書籍としても、後世に語り継がれるものになりそうだ。 だがそのことは同時に、従来の電子書籍の世界からは見えなかった課題も、あぶりだすことになった。紙と電子の書籍を横断検索できる「ブック・アサヒ・コム」の運営に携わる経験から、また発売日に複数の電子書籍ストアで同書を購入した個人的体験から、現段階でわかっていることを報告したい。 中心的なテーマは電子書籍の「探しにくさ」である。 電子書籍版『スティーブ・ジョブズ』の例から考える 発売前後の経緯を簡単に振り返ってみよう。各種報道によると、講談社は同書を当初2011年11月に発売する予定だったが、10月5日のジョブ

  • 「目次録」は本との出会いを革新する

    東京丸の内オアゾにある丸善丸の内店。総床面積は1,750坪・蔵書数約120万冊というこの大型書店に、「松丸舗」はある。迷路のように書棚が並び、一般的な作家や出版社別ではなく、テーマごとにセレクトされたが並ぶこの場所は、一種独特な雰囲気を放っている。

  • 楽天、kobo買収の本当の意味

    楽天がkobo買収というニュースにはさすがに驚いた。驚いた後で、「なるほど、こりゃすごい良い買い物をしましたな」と感心するとともに、まだ電子書籍のガジェットがどうのこうのという日での取り上げられ方に脱力。なんとか気を取り直してこのコラム書いてます。 日ではアマゾンが和書を売るオンライン書店としてだけでなく、日用品ならなんでも扱う外資系のオンラインリテーラーとして頑張っているから知名度も高いせいか、まだキンドルのサービスが始まってもいないうちから、黒船が、と話題になることも多いのはわかる。 しかし、アメリカではアマゾンがEブックもEコマースもすべてを牛耳っているわけではないので、機会あるごとにバーンズ&ノーブルのNOOK(ヌック)やソニーのReader、グーグルのeBookstoreやkoboもそれぞれの強みを活かしながらそれなりのプレーヤーになっていることを伝えてきたつもりなのだが

  • Kindleは「本らしさ」を殺すのか?

    先日phaさんの「電子書籍とブログって何が違うの?」という文章を読み、最初そのタイトルに違和感を覚え、そりゃ全然違うだろうと内心突っ込んだのですが、よくよく考えるとそうとも言えない。思えばこのタイトルと同じ問題意識を何度も文章にしている人を自分も知ってるじゃないかと思い当たりました。それは『クラウド化する世界』などの著書で知られるニコラス・G・カー(Nicholas G. Carr)です。 phaさんが問題としているのは主にコンテンツの流通と課金ですが、カーはそれだけでなくたらしめるものは何か、それは電子書籍によってどう変わるのかということにフォーカスしており、こちらのほうがより普遍的な問題でしょう。文ではカーの文章を紹介しながら「」と「インターネット」の間の一線について考えてみたいと思います。 の「アプリ」化 まずiPad発売と同時期に書かれた「The post-book b

    Kindleは「本らしさ」を殺すのか?
  • 台湾の電子書籍プロジェクト「百年千書」

    まずはこの映像をみてください(埋め込み映像が見られない方はこちらから)。これは台湾の台灣數位出版聯盟(=台湾電子出版連盟、TDPF)が9月末にサイトを公開した「百年千書」プロジェクトのコンセプトを伝えるものです。 「百年千書」は、過去150年間に台湾で出版されたのなかから、千冊を選んで電子書籍として公開するプロジェクトで、2010年から準備が進められていました。アヘン戦争が起きた1840年から1990年までのが対象となっており、中国の著作だけでなく、欧米や日の出版物からの翻訳書も数多く含まれています。 集められたはサイトでテーマ別・年代別などによって分類され、電子書籍として購入・閲覧できます。技術的にはHTML5とEPUB、そしてOPDS(Open Publication Distribution System)のもとで、クラウドコンピュータ上に置かれたコンテンツをウェブブラウザで

  • 電子書籍戦争は終結、勝者はアマゾン

    ※この記事は「辺境社会研究室」で9月29日に公開された記事「電子書籍戦争は終結、はアマゾンのものになった」を、著者の了解を得て改題のうえ転載したものです(「マガジン航」編集部)。 概要:アマゾンが発表した新しいKindleは79ドルという価格攻勢により電子書籍端末の決定版となった。アマゾンが電子書籍市場を支配することで、読者、出版社、書き手のあり方はまったく異なるものとなっていく。 79ドルのインパクト ここ数年続いた電子書籍をめぐる狂想曲は、完全に終わった。終わりを告げたのは、始まりを告げたのと同じ、アマゾンだった。9月28日に開催されたアマゾンのKindle発表会は、そう確信するに十分な内容であった(下はその映像)。 アマゾンが最初に電子書籍端末Kindleを発表したのは2007年11月のことだ。初代Kindleは白黒のE Inkディスプレイ、やぼったいデザイン、電子書籍に対応するだ

    電子書籍戦争は終結、勝者はアマゾン
  • 国際電子出版EXPO2011レポート

    昨年に引き続き、今年も東京国際ブックフェアと国際電子出版EXPOに行ってきた。要するに紙のと電子の一大見市である。 「国際電子出版EXPO」は去年までは「デジタルパブリッシングフェア」という名称だった。この改称は、「電子書籍」「電子出版」という用語が市民権を得つつあることが反映されているようにも思われる。「電子書籍元年」とされた去年と比べれば話題性には欠けるように思われたが、それでも実際に会場を訪れて去年との変化に気づいたところがいろいろとあった。 キーワードは「電子化」から「販売」へ 去年の東京国際ブックフェア&デジタルパブリッシングフェアについてのレポートは、「マガジン航」のバックナンバーで「電子書籍は波紋を生む「一石」となる」などを参照していただきたい。今年は開催3日目の7月9日土曜日に回ってきた。 なお、このレポートはあくまでも個人的な興味の範囲でのレポートであることを最初に

  • 電子書籍に前向きな出版社が考えてること

    未来なんてわからない 「の未来はどうなるのか?」ということを2011年に問われたら、その質問の意味は、「電子書籍になるのか? 紙の電子書籍に取って代わられるのか?」だと考えていいと思う。 もちろん、「出版不況で人はどんどん離れてる」とか、「ウェブで情報や知識は足りるんだからなんか必要ないんじゃないか」とか、「は残るかもしれないけど出版社は要らないでしょ、インターネットでだれでも発信できるんだから」とかいう質問も考えられるけど、ね。 で、紙のは残るのか、電子書籍に置き換わるのか? といった未来予想についてボクは「わからない」としか答えられないんだ。ホントにわからないし、積極的に「わからない」という態度を維持するのがいいとも思っている。 未来は「わからない」んだけど、でも今起こっていることは全部「正しい」(勝間和代さんののタイトルのパクリですけど)とも思っていて、このふたつ

    電子書籍に前向きな出版社が考えてること
  • 新潮社の「電子書籍基本宣言」に思うこと

    これから紙のとデジタルのとは、どういう関係になるのか。その問題を考えるにあたって格好のたたき台となりそうな「基宣言」が、新潮社のウェブサイトに公開されています。4月28日にオープンした新潮社の電子書籍ポータルサイト「Shincho Live!」の「新潮社電子書籍宣言」がそれです。 まず、その全文を以下に引用します。 一、 電子書籍は、情報が氾濫するネット環境においても「作品」であり、長い年月に耐えうるものを目指さなければならない。 一、 電子書籍は、人々の豊かな知的生活に貢献するものであり、ネット習熟度の高低や機器の差異がそれを妨げるものであってはならない。 一、 電子書籍は、人々と書籍の偶然かつ幸福な出会いをもたらす書店とも共存共栄を図らなくてはならない。 一、 電子書籍は、紙の書籍と同様に、作品を生み、広め、読む人々の環の中で育まれるべきものであり、外部の論理に左右されてはな

  • 電子図書館のことを、もう少し本気で考えよう

    OverDrive一社独占 ご存知の方もいるかもしれないが、米国ではほとんどすべての公共図書館で「電子書籍のダウンロード貸出サービス」が提供されている。単館の場合もあれば、カウンティ(郡)の公共図書館コンソシアムで提供している場合もあり、コンソシアムの場合は参加館の利用者がダウンロード貸出を利用できる。すごいのは、ほぼOverDrive社の一社独占ともいってよい状態であることだ。 利用者は、自宅にいながら図書館のウェブサイトにアクセスし、そこからデジタル資料のダウンロード貸出のページに移動する。自分の利用する図書館(または参加館)を選び、図書館カードの番号を入力し、PIN(パーソナル・アイデンティティ・ナンバー:図書館カードの暗証番号)を入力してログイン。これで自分が読みたい電子書籍を探しダウンロードできるようになる。ダウンロードした電子書籍は自分のパソコンや、対応していればiPadやiP

  • CES2011に見る電子書籍の動向

    1月7日から13日にかけて米国ICT動向を取材した。ラスベガスで開催された2011インターナショナルCESをはじめ、サンフランシスコやシリコンバレーのトレンドをウォッチして回った。今年のCESで最も目を引いたのがスマートフォン、タブレット端末の隆盛だ。大手企業からベンチャー企業にいたるまで端末群を出展。昨年の目玉だった電子書籍端末(e-inkなどを用いた読書専用端末)は、かなりマイナーな存在になっていた。 そのような中にあって、後述する米国大手書店のバーンズ&ノーブルと、大手新聞社のニューヨークタイムズ(NYT)が、それぞれ自社のネットサービスをアピール。来、家電とは無縁の両社の出展は既存メディアとICTの融合を実感させる光景だった。 米国ではスマートフォンが格的な普及期に入っている。それはCES会場を周回するだけで把握できた。それこそも杓子もスマートフォンを持ち歩いている。このよう

  • 電子書籍論と歴史的視点 « マガジン航[kɔː]

    以下は、『図書新聞』2010年7月24日号(第2975号)に掲載された拙稿です。同号は「2010年上半期読書アンケート」にあわせるかたちで、「電子書籍」特集の体裁も採っています。この記事のほかには、目玉企画として、前田塁・永江朗・藤沢周・円城塔の4氏による座談会「「電子書籍元年」、何を考えるべきか」が掲載されました。ご関心がおありの方は、ぜひ図書新聞編集部に問い合わせるか、図書館などでバックナンバーにあたっていただければと思います。 さて、今回、当該記事をサイトに転載していただくにあたって、縦書きを横書きに変更し、改行数を増やし、小見出しを貼付しました。内容面での改筆は行なっておりません。基的に初出のままです(ただし、校正前データを利用)。そのためもあって、ネットにアップするテキストとしてはいささか違和のある文体になったように思います。すなわち、紙に印刷されたテキストをそのままネットに

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  • 印刷屋が三省堂書店オンデマンドを試してみた

    電子書籍元年と何かと騒がしかった2010年、その締めくくりは電子書籍ではなくオンデマンドブックサービスだった。 三省堂書店が米国On Demand Books社の提供するオンデマンド印刷製機であるエスプレッソ・ブック・マシン(EBM)を店舗に導入するというニュースが入ったのは8月の上旬。 EBMを最初に導入する同業者はどこになるか、興味をもって見守っていた僕は驚きとともにそのニュースを読んだ。 Espresso Book Machine 僕がエスプレッソ・ブック・マシン(EBM)という、洒落た名前のオンデマンド印刷・製機の存在をWEBのニュースで読んだのは確か2008年のこと。割合にコンパクトな機械で、公共の施設等に設置可能だという。オーストラリアの書店が同年これを導入しているが、僕は(間抜けなことに)日では出版系の印刷屋がこれを導入するものと思い込んでいた。 EBMの初号機は200

  • 「電子書籍を体験しよう!」モニターレポート

    東京都立中央図書館では、2010年11月22日から12月22日までの1か月間、企画展「電子書籍を体験しよう!」~新しい図書館のカタチ~を開催している。この企画展では、「会場備え付けのパソコンから電子書籍(約1,000タイトル)を閲覧できます」「iPadKindleなどの電子書籍端末が体験できます」とうたっており、都立図書館が真剣に電子書籍の時代を考え始めていることが伺われる。 この企画展に合わせて、出品された1000タイトルの電子書籍を自宅のPCから閲覧できるモニターが事前募集されていた。私はその情報を知ってすかさず申し込みをしたのだが、IDとパスワードがメールで送られてきた。 11月中旬に専用サイトをOPEN、22日からモニター開始ということで期待した。ただ、モニター開始時に改めて連絡はなく、少し遅れて思い出した次第である。今回は、実際にこの「電子書籍図書館が貸し出す」システムのモニ

  • 統一中間フォーマットの要件

    統一フォーマットの技術的意義 統一中間(交換)フォーマット(以下、統一フォーマット)を策定することになった経緯については、別稿に詳しく述べられているのでここでは繰り返さないが、その技術的な意義について述べる。 国内のテキスト系コンテンツフォーマットとして、現状ではボイジャーのドットブック(.book)、シャープのXMDFが双璧となっている。ドットブックはHTMLを拡張した仕様となっており、一方XMDF(記述フォーマット)はXML形式で定義されている。それぞれのタグ記述例を図1 に示す。いずれも、「横書き、文のフォントはOsaka、MSゴシックの順に優先して使用」「“はじめに” という文字列を中央揃えで表示」という記述を行う例である。 いずれのフォーマットもタグ形式で定義されている点では同じであるが、両者のタグや属性は、機能が一致しているものでも、図1でわかるように、名称は必ずしも一致して

  • 電子書籍ファイルフォーマットの構造 « マガジン航[kɔː]

    記述言語とマーク付け 電子書籍に限らず、文書などの構造をもつデータの交換フォーマットには、ASN.1、SGML、XMLなどの記述言語が用いられてきた。 記述言語は文書構造記述などの特定目的のデータの記述とアクセスを指示する言語であり、指示要素の組合せによってコンピュータの多様な動作を規定するプログラム言語と比較するとき、データがテキスト形式で扱われ、制御変数をもたないことが多いなどの特徴をもつ。目的によって表1のように分類される。 マーク付けの一般化 文書処理の電子化は植字機(タイプセッタ)において開始され、印刷指示がタグとして文書データの中に埋め込まれた。タグは機器に依存していたため、それが埋め込まれた文書データの交換性は極めて限定されていた。 そこで文書中に印刷指示を書くのではなく、次のように文書を構成する意味的なまとまり(論理的要素)を示すタグを文書データの中に埋め込む(マーク付けす

  • 日本語表現と求められる標準化

    標準化の背景 日語書籍における組版規則は、日語表現と出版文化形成に大きな役割を果たしている。欧米の書籍と比較すればわかるように、縦組み、ルビなどの日語特有の組版規則、多数の文字、さらに多様なフォントなど、いくつもの特徴を有している。その結果、日語の電子書籍の制作においては、手間とコストがかかる傾向にある。 一方で、「電子書籍元年」と呼ばれる熱狂的な電子書籍ブームの到来である。先頃開催された東京国際ブックフェア(東京ビックサイト、7月7~10日)では、過去最高の来場者となり、中でも電子出版関連のコーナーに多くの見学者が押し寄せることとなった。 日での電子書籍市場は、574億円(インプレスR&D「電子書籍ビジネス調査報告書2010」)となり、出版市場(1兆9356億円)に対して3%程度と十分な市場を形成するに至った。2010年後半には、日語対応電子書籍端末の販売が予想されており、さ

  • みんなの電子出版であるために

    幾多の人たちが電子的な出版の普及に取り組んできた。しかし、その普及は決して容易なものではなかった。ある意味で積み上げては一切をもともなく崩しさる徒労の繰り返しだった。 なぜそうだったのか。考えてみると、電子的な出版が何かに依存する体質をもっていたことがわかってくる。電子的な出版とは、を閲覧するために常にコンテンツを表示するデバイス(端末)を必要とする。つまりeBook(電子書籍)とは、の中味(文)とのガワ(外枠)とが分離しているものであり、外枠である電子書籍端末を中心とした導入が繰り返されてきた。成り立たせるべき電子的な出版のフォーマットは常に競争の道具となり、これを共有化し統一化する動きへと発展することはなかった。 これまでの電子出版の敗因と理由 電子的な出版には、カバーしなければならない4つの領域がある。 1. コンテンツ領域 2. ハードウェア領域 3. デリバリー領域 4.

    みんなの電子出版であるために