『虐殺器官』。このタイトルのインパクトと、帯に書かれた大森望氏による派手な紹介文 「イーガンの近未来で『地獄の黙示録』と『モンティ・パイソン』が出会う」という部分が やたらと気になったので、読んでみた。 読後の感想を言えば、大森氏のあの惹き文句は嘘ではないが、適切とも言いかねる。 イーガンを引き合いに出すほどのぶっ飛んだ科学や難解な話はなく、エスピオナージュ的作風は むしろアレステア・レナルズやチャールズ・ストロスのものに近いだろう。 『地獄の黙示録』も『モンティ・パイソン』も引用されてはいるが、前者は類型としての引用であり 後者は作中の遊びとしての要素が目立ちすぎ、皮肉として成立していないうらみがある。 といっても、別にこの小説がつまらなかったというわけではない。 事前に予想していたほど抽象的な話ではなく、より生々しいテーマを直截的に描いた作品だった、 というだけのことである。 本作を例