9.30事件で殺された将軍たちを祀ったルバンブアヤの記念碑前にて。スハルト政権により、彼らだけが事件の犠牲者だというストーリーが作られ、ジェノサイドのことは覆い隠されてしまった 1960年代後半、インドネシアで二度のクーデターが起こった。事件発生の日付から、前者は9.30事件(1965年9月30日)、後者は3.11政変(1966年3月11日)と呼ばれる。一連の事件に端を発する権力闘争の渦中で大規模な殺戮がおこなわれ、多くの一般市民が残酷な手口で命を奪われた。『インドネシア大虐殺』は、日本ではあまり馴染みない史実を克明に描き出し、話題を呼んだ。戦後アジア史の闇を描く異色の一冊は、いかに生まれたのか。著者に執筆の背景をうかがった。 ――研究テーマとしてインドネシアを選んだ理由から、おうかがいできますか。 倉沢:私が大学で卒論を書いたのが1969年、インドネシアでスハルト政権が正式にスタートした