平壌で外国人専用のホテルといえば、高麗ホテルである。ここで宿泊客たちは北朝鮮の一般住民が口にできないような料理を食べ、外貨を落とす。この何げない行為を、政治犯収容所という北朝鮮の闇の世界が支えていると言われてもだれもピンとこないだろう。 北朝鮮にはいま、「管理所」という名の政治犯収容所が6カ所あり、合わせて約20万人もの人々が劣悪な生活を強いられているとみられる。政治犯とは、金日成・正日父子を批判した者、反政府の思想的背景をもつ者など、体制に都合の悪い者すべてだ。 「彼らは自分が何の罪なのかも知らされない。ただ働かされて死んでいく。死体は(収容所の外に)出ないので、存在そのものがこの世から消えてなくなる」 こう語るのは、脱北者の安明哲氏(41)だ。 「『3世代まで根絶やしにすべきである』という金日成教示に従って、子や孫も捕らえられる。過酷な生活でだいたい10年も働けば死んでしまう」 安氏は