(前回の続き) とはいえやはり30過ぎてから、それも田舎の村社会の中で仕事もせずひきこもるというのは口で言うよりやはりヘヴィーなもので、自分の中に根深くビルトインされている社会通念、「仕事どないすんねん」「近所にどないして顔向けすんねん」・・・そんなこの本が言うところの「社会的自己」には随分苦しめられたものだった。 確かに今回の芥川賞を受賞した作家さんの略歴にまつわるネット上の賛否の例を出すまでもなく、就職難と言えどもいい年してバイトもせず・・・みたいな社会通念に基づく人間の感情もある意味至極自然なものとは思う。だがそれを最も敏感に感じているのが当のひきこもっている本人で、その自縄自縛状態から身動きが取れない以上、そこからの突破口としてこの本が言う「社会的自己からの撤退」を果たした上で「正しくひきこもる」必要性というのも理解できる所である。 もちろんそのためにはこの「引きこもるという情熱」