2011年製作のハンガリー・フランス・スイス・ドイツ合作、渾身のモノクロフィルム映画です。 タイトルは「哲学者ニーチェがトリノの広場で鞭打たれる馬を見て泣き崩れ、そのまま発狂した」という有名な逸話から。 監督タル・ベーラ氏が長年温めていた「その馬はどうなったのだろう?」という疑問を元に撮られた映画とのことで、原題は「トリノの馬」だそうです。ニーチェという名前を出されると「ニーチェが出てくる映画か!」と早合点しがちですが、ニーチェじゃないです。馬ですよ。 冒頭、吹きすさぶ暴風と砂埃の中、老人が荷馬車を走らせる場面。 ははあ、もしかしてこの馬がその、広場の例の、アレなんですかねー、ニーチェの訴えで助けられて、どこか良い処へでも行くんですかねー、…などとハリウッド映画的な思考を巡らしていられるのも、ほんの30秒くらいの間でしかないでありましょう。 呻きのような、重苦しい弦楽。 四方から睨め回すカ